消費者がAIでアプリを自作できる「Emergent」、2300万ドル調達へ
アプリ開発の民主化を目指すスタートアップ、Emergentが2300万ドル(約37億円)のシリーズAラウンドをLightspeedが主導して調達した。同社はインド出身の双子の兄弟、ムクンド・ジャとマダヴァ・ジャが共同創業。ムクンドはGoogle傘下の急配達スタートアップDunzoのCTOを務めていた経歴を持ち、マダヴァはDropboxで勤務。2023年末、両者はAIがコーディングを変える時代が到来すると判断し、非技術者でもアプリを作れるプラットフォームの開発を開始。 Emergentは「ビーブコーディング(vibe coding)」を実現する。ユーザーが自然言語のプロンプトでアプリの構想を提示すると、AIエージェントが要件を洗い出し、画面設計、API連携、デプロイまで自動で処理。開発者がコードの詳細を理解しなくても、エラーをAIが検出し修正する仕組みを備える。実際の体験では、ペットのワクチン管理アプリを30分以内に作成可能。他の同様のツールでは失敗しやすいプロンプトでも、Emergentは安定して動作する。 同社はこれまでに3000万ドルを調達。100万人以上が150万アプリ以上を構築。現在はExpoを活用してモバイルアプリをデプロイしているが、今後自社のネイティブアプリをリリース予定。また、複数のサービス連携を簡素化する「ユニバーサルAPIキー」も導入。ユーザーが各サービスのアカウントを別々に作る必要がなくなる。 一方、課題も残る。アプリの発見や収益化の仕組みはまだ限定的。ユーザーが作ったアプリを他の人に届ける仕組みや、Stripeなどの決済連携はユーザー自身で対応が必要。今後は発見性と収益化の支援を強化する計画。 競合は多数。CanvaやFigma、Perplexity、Opera Neonなどがミニアプリの作成を促進。VibecodeやRocketなども同分野で資金調達を成功させている。だが、Lightspeedのヘマント・モハパトラ氏は、「Emergentは開発後のデプロイ、メンテナンス、サポートまでAIでカバーする点で他を圧倒している」と評価。技術的実力と、非技術者に開発のハードルをゼロに近づけるビジョンが投資の決め手となった。