NVIDIA、開発者向けロボット用チップ「Jetson AGX Thor」を3499ドルで発売へ—AIロボット開発を加速
NVIDIAが新開発のロボット用AIチップ「Jetson AGX Thor」の開発者キットを3,499ドルで販売開始した。同社はこのチップを「ロボットの脳」と称し、次世代人型ロボットや自律走行車の開発を支援する基盤として位置づけている。初回のキットは来月出荷予定で、開発者はこれを活用してプロトタイプを構築できる。その後、量産向けの「Thor T5000モジュール」を1,000個以上購入する企業には単価2,999ドルで供給する。 NVIDIAのジェンセン・ファンCEOは、AIに次ぐ同社の最大の成長分野としてロボティクスを挙げており、過去2年間で売上高が3倍以上に拡大した背景にある。同社のロボティクス・エッジAI担当バイスプレジデント、ディープ・タラ氏は、「我々はロボットや車を製造しないが、インフラとしてのコンピューティング基盤とソフトウェアを提供している」と強調。Jetson Thorは、最新のブラックウェル(Blackwell)GPUを搭載し、前世代比7.5倍の処理性能を実現。大規模言語モデルや視覚認識モデルをリアルタイムで実行可能で、周囲環境を理解する能力が求められる人型ロボットに最適とされる。メモリ容量は128GBと、大規模AIモデルの実行に不可欠な仕様だ。 Amazon、Meta、Boston Dynamics、Agility Roboticsといった企業が既にJetsonチップを活用しており、Field AIなどにも投資している。現在、ロボティクス事業はNVIDIA全体売上約1%にとどまるが、2024年5月の四半期では5億6700万ドルの売上(前年比72%増)を記録。同社は自動車とロボティクス部門を統合し、新たな成長分野としての位置づけを強化している。また、中国ブランド向け自律走行車にも適用可能な「Drive AGX」チップは、専用のDrive OSを搭載しており、ロボット用チップと類似のアーキテクチャを持つ。NVIDIAは、AIとロボティクスの融合を推進し、次世代のインテリジェントシステム基盤を構築する戦略を進めている。