AIが再分析で8600回の地震を発見、ヨセミテの地震記録が10倍に
人工知能(AI)を活用した研究により、ヨセミテ国立公園の地質活動に関する新たな知見が得られた。アメリカ・ウィスコンシン大学の研究チームは、従来の手作業による地震データ解析に代わってAIを用いることで、ヨセミテのカルデラで2008~2022年の間に発生した地震の数を、従来の8,600件から10倍以上に増やした。研究者らは、深層学習アルゴリズムと詳細な三次元速度モデルを組み合わせることで、15年分の高解像度地震カタログを作成した。これにより、ヨセミテの地震データは86,276件に達し、火山活動や地震システムの理解が深まった。 ヨセミテのようなカルデラは、かつて大規模な火山噴火を起こした後、マグマ室が空洞化し、地面に大きな窪みが形成される地形である。ここでの地震は、主に地殻の圧力で岩盤が破壊される「脆性破壊」が原因で、その多くは地震群として発生する。研究では、これらの地震群が既存の「主震-余震」のパターンに従わないことが明らかにされた。 研究責任者であるBing Li氏は、従来の手作業では膨大なデータを解析することができず、スケーラブル(拡張性)がなかったと語る。しかし、AIの導入により、地震群の新たなパターンを明らかにできるようになった。Li氏は、こうした知見は地震予測や地熱エネルギー開発の安全対策、公衆へのリスク情報提供にも役立つと強調している。 さらに、研究では、ヨセミテの地震群が未熟な断層構造で発生していることが分かった。断層が成熟するには多くの「ずれ」が蓄積するが、未熟な断層ではその過程が進んでいない。Li氏は、「地震群の連鎖的な発生メカニズムについての理解はまだ不十分で、現在の手法では空間と時間の関係を間接的にしか測れないが、新たなデータベースを活用すれば、統計的な解析が可能になる」と述べている。 この研究は、ヨセミテ国立公園がまだ多くの謎を抱えていることを示し、今後の研究に大きな期待をもたらしている。最近では、ノーリス・ゲイサーバスインの新たな穴が発見されるなど、地質学的な変化が継続している。