2025年、米半導体業界の激動の1年:インテルの再編、ナビデスの中国進出、トランプ政権のAI半導体輸出規制が牽引
2025年、米国半導体産業は政治的・経済的動揺に見舞われた。AI競争を制するための戦略的基盤として、半導体の動向は極めて重要だった。年初め、民主党のジョー・バイデン大統領は、AIチップの輸出を三段階に分類する「AI拡散フレームワーク」を発表したが、任期終了間際の1月13日に提出されたこの規制は、5月に正式に撤回された。一方、トランプ政権が就任後、AIチップ輸出規制を強化する方針を示し、特に中国向けの制限を厳格化。4月にはNvidiaのH20チップに輸出許可制が導入され、同社は第1四半期に55億ドルの損失を計上した。 その中で、Intelは新たなリーダーシップ体制を構築。3月12日、業界経験豊富なリップ・ブ・タン氏がCEOに就任。彼は「エンジニアリング重視の企業」へと再編を宣言。4月1日には非コア事業の分離を発表し、ネットワーク・エッジ部門の売却を検討。同月、同社はTSMCとの共同ファウンドリ事業の構想も浮上。一方で、オハイオ州の巨大工場は建設が2度延期され、2030年完成、2031年開業の見通しに。また、4月22日には2万1000人超のリストラを発表。7月には製造拠点のドイツ・ポーランドプロジェクトを中止、テスト部門の統合も決定。年内の従業員数は7万5000人規模に縮小。 Nvidiaは8月に第2四半期の売上高を記録更新。データセンター事業は前年比56%増。一方で、中国向けAIチップ販売の再開を政府と合意。7月14日にはH20チップの再販申請を正式に提出。新たな中国向けRTX Proチップも発表。ただし、中国市場の収益を今後は予想に含めない方針をCEOのジェンセン・ファンが表明。中国市場への依存を減らす動きが顕著。 AMDも積極的な買収を展開。5月に光伝送技術のEnosemi、6月にはAIソフトウェア最適化企業Briumを買収。また、AI推論チップ開発チーム「Untether AI」を人材獲得( acqui-hire)した。これにより、Nvidiaに次ぐAIハードウェア強化を図っている。 政府の動きも活発。8月、米政府はIntelへの既存補助金を10%の株式に転換。同社のファウンドリ事業の保有率が50%未満に下がった場合、罰則が発動。また、ソフトバンクが20億ドルを出資。一方、マレーシアは米国製AIチップの輸出に30日通知制を導入し、違法流出防止に動いた。 トランプ政権は、中国向けAIチップ輸出を巡る「ジーニー的リスク」を懸念。UAEとの大規模取引も、国家安全保障上の懸念から保留。米中間の稀土類資源交渉と連動して、チップ貿易の交渉が進む中、2025年は「技術主導と規制の狭間」を象徴する年となった。