マスク、Optimusで80％の価値を期待　テスラがAIとロボットによる「持続可能な豊かさ」を宣言

2025年9月2日、テスラは「マスタープランPart IV」を発表し、AIとロボット技術を核とする新たなビジョンを提示した。同日、イーロン・マスク氏はX（旧Twitter）で「テスラの価値の約80％は、人型ロボット『オプティマス』から生じる」と明言。これは、自動運転ソフトウェアとオプティマスの進化が、同社の未来を左右すると考える根拠を示している。 マスタープランPart IVは、「持続可能な豊かさ」の実現を「北極星」と位置づけ、AIを物理世界に統合するための戦略を描く。その根幹にあるのは5つの原則——成長は無限、技術が制約を打破し、現実問題に技術で対応し、自動化は全人類に恩恵をもたらし、広範な普及がさらなる成長を生む——である。特に「オプティマス」は、危険・単調な作業を代替し、人間が創造的活動に集中できる社会の実現を目指すと強調された。 実現手段として、ロボタクシー（Robotaxi）の商用化、CybercabやRobovanといった新車種の開発が進む。これらはAIと自動化を統合し、交通・労働・エネルギーの根本を再定義するという野心的な構想だ。メディア「Drive Tesla」は、「テスラの使命が電動化を越え、社会全体のあり方を変える可能性を示している」と評価した。 一方で、批判の声も根強い。Electrekは「ビジョンは空想的で、AIの熱語にまみれたウトピア的妄想」と指摘。Redditユーザーも「技術で資源不足を解決できるとは思えない。問題は技術ではなく、人間の欲望にある」と論じ、現実との乖離を懸念している。 これまでのマスタープランは、2006年の「ロードスター→モデルS→モデル3→エネルギー事業」の明確な道筋を描いた。2016年のPart IIは自動運転と太陽光屋根の統合を掲げたが、完全実現には至らなかった。2023年のPart IIIはグローバルなエネルギー転換を提唱したが、その後の販売台数の伸び悩みも背景にある。 マスク氏自身、Part IVを「シンプルで、前回より理解しやすい」と位置づけている。英伟达やRunwayがロボット分野に本格進出する中、テスラのAI・ロボット戦略は大きな注目を集めている。しかし、技術的課題と市場実現のギャップが、この「豊かさの未来」を支えるかは、今後の実績にかかっている。