AIで「自分だけのアニメ」を生成——Showrunnerが目指す「AI版Netflix」の実現可能性
元Oculus Story Studio共同創業者で、現在はAIエンターテインメントスタジオFableの創業者であるエドワード・サッチ氏が、自身の新作プラットフォーム「Showrunner」を通じて、ユーザーを「AI版Netflix」のコンテンツ創作者に育てる構想を進めている。ShowrunnerはDiscord上で動作し、ユーザーがキャラクターやアートスタイルを選択し、プロンプトで会話や行動を指示することで、短いアニメーション動画を生成できる。たとえば「イーロン・マスクとサム・アルトマンがオフィスの休憩室でホームレス問題をSaaS化する話」といったユニークなシナリオも実現可能。生成された動画は、『エグジット・バレー』などFableオリジナルのアニメ風に仕上げられ、AI生成の声や不自然な動きが特徴的だ。 サッチ氏は、VR映画の開発で失敗を経験し、ユーザーが「受動的」かつ「能動的」な体験を交互に求められるVRの限界に気づいた。その教訓から、AIが「世界をシミュレートする」存在として、キャラクターに家族や生活を持つことで本物らしさを演出する「AIシナリオ世界」の構築を目指す。当初、『Wolves in the Walls』のVR版開発でAIキャラクターの対話制限に直面し、その課題がAIによる「デジタル存在」の可能性に目を向けさせるきっかけとなった。 現在は無料で利用可能だが、今後月10~20ドルのサブスクリプション制を導入する予定。また、ディズニーやマーベルなど大手スタジオとの提携も検討中で、『マンダロリアン』キャラクターを使った世界観生成モデルの開発を視野に入れている。サッチ氏は、AIが単なる「低コスト制作ツール」ではなく、新しいメディアとしての可能性を秘めていると強調。ユーザーが自ら物語を創り出すことで、従来の視聴者から「共同創作者」へと変貌させたい考えだ。 ただし、生成されたコンテンツはスタジオの著作権に属し、ユーザーは実質的に無償でコンテンツを生産している状態。サッチ氏は、独立クリエイターとの収益共有モデルを検討しており、ファンが作品に感情移入してコンテンツを生成する仕組みで、クリエイターに新たな収入源を提供したいと語る。しかし、現時点での生成品質は「不自然なAIアニメ」にとどまり、本物の芸術的価値にはほど遠い。サッチ氏の夢は「AI版トイ・ストーリー」の創出だが、現実には「Roblox風の労働の再構築」に近い、倫理的な課題を抱える挑戦となっている。