アップル、AI投資を大幅拡大へ、クックCEOが明言。米国関税問題にも言及し、AI関連買収も検討中と表明。
Appleは2025年Q3の決算発表を通じて、人工知能(AI)への本格的投資を強調した。CEOのティム・クック氏は「AIは私たちの生涯で最も深遠な技術の一つ」と述べ、AIを製品やプラットフォーム、全社的な戦略に統合する方針を明らかにした。同社はAI分野に「大幅に」投資を拡大しており、従業員の一部をAI開発に再配置している。また、AI関連のM&Aも積極的に検討しており、今年すでに7社を買収。1回の買収が数週間に1回のペースで進んでおり、大きな規模の買収も視野に入れている。 一方で、AppleはAI分野での遅れが指摘されてきた。MetaやGoogleに比べてApple Intelligenceの実装が遅れており、一部ではAI搭載Siriのデモが実用レベルに達していなかったとの批判もあった。クック氏は「正しくない製品を早く出すより、完璧なものを遅く出す方が良い」と主張。現在、20以上のAI機能(視覚認識、文章修正、書き出し支援など)をリリース済み。今後、ライブ翻訳やAIトレーニングアシスタントの導入を予定しているが、よりパーソナライズされたSiriのリリースは2026年に延期された。 このAI戦略の背景には、世界中の競争激化がある。AmazonはAI関連の資本支出を314億ドルにまで拡大。アレクサプラスの広告連携を含むAIビジネスモデルの拡大を進める。MicrosoftもAIによるクラウドサービスの成長で18%の売上増。同社は4兆ドルの時価総額を達成し、NVIDIAに次いで歴史的企業に。一方、収益拡大と同時に9,000人規模の人員削減も実施され、「成功のジレンマ」として課題を認識している。 Appleの財務面では、Q3の売上は940億ドル(前年比10%増)で、記録を更新。iPhone売上は446億ドル(13%増)、Macは81億ドル、サービス部門は274億ドル(13%増)と好調。ただし、トランプ政権による関税政策が影響。中国・インド・ベトナムで生産される製品に課される関税が、6月期に約8億ドル、9月期には11億ドルにまで上昇する見込み。Appleは米国への生産移転を進めるべく、デトロイトに製造アカデミーを設立する計画を発表。4年間で5000億ドル以上の米国内投資を実施するとしている。 クック氏は、AIデバイスがiPhoneを置き換えるとは考えず、「補完的」な存在だと強調。MetaがAIグラスを推進する一方、AppleはiPhoneの中心性を維持する方針を示した。AI技術の「商品化」の可能性については戦略的裏付けを明かさず、慎重な姿勢を貫いている。AppleはAIの進化と関税リスクの両面で挑戦に直面しつつも、技術と財務の両面で強固な基盤を維持している。