AIがインターネットを支配する時代、コンテンツ創作者の未来を救う鍵は「データの価格化」に

CloudflareのCEO、マシュー・プライス氏が、AIの発展がインターネットの未来を脅かす可能性を警告した。WIREDのポッドキャストに出演した彼は、検索エンジンが「ウェブの主要インターフェース」だった時代はすでに終わっていると指摘。現代の検索結果は、複数のコンテンツを統合・要約した「AIオーバービュー」で構成され、ユーザーに「答え」を提示する「回答エンジン」に変化していると説明した。この変化により、コンテンツ作成者であるジャーナリスト、研究者、ライターらの収益源であるトラフィックが減少すると懸念している。 プライス氏は、AIがすべてのコンテンツを代替する「死んだインターネット」の未来は現実的ではないとし、AIは人間の生成コンテンツに依存しているため、自発的に大量の新規コンテンツを創出できるわけではないと分析。一方で、「ブラック・ミラー的な未来」が「恐ろしくあり得る」と述べた。このシナリオでは、AI企業（アントロピック、ペルペクシティ、OpenAIなど）が、失業するコンテンツクリエイターを雇い、自社の「情報プロパガンダ機関」として運用する。歴史的に見れば、メディチ家のような権力者たちが芸術家や思想家を支援し、自らの価値観を広めた1400年代の様相に似ているという。 その結果、世界の情報は「保守的」「進歩的」「中国風」「インド風」といった意识形态ごとに分断され、インターネットが「情報の民主化」の場ではなく、大企業による情報の独占と洗脳の場となる。実際、xAIのGrokがエロン・マスクの意見に合わせて回答を調整する事例も発覚しており、その懸念は現実味を帯びている。 しかし、第三の可能性もあるとプライス氏は主張。AIがコンテンツを無償で利用する時代に終わりを告げ、企業がコンテンツ提供者に支払いをすることで、コンテンツの価値を再評価する「ライセンス型モデル」が広がるという。Cloudflareは今年夏、AIクローラーの無断収集をブロックできる機能を提供し、APやコンデ・ナストなど大手メディアが導入。コンテンツの「希少性」を創出することで、AI企業がコンテンツを購入する仕組みを構築しようとしている。 この未来は、Googleがエンゲージメントを最優先にした時代の再現を避けられる可能性を秘めているが、情報の流通がAI企業の利益に依存する新たなジレンマも生じる。コンテンツ作成者とAI企業の関係が、どのように再定義されるかが、インターネットの未来を決める鍵となる。