OpenAIが提唱する次世代目標「自動研究者」の実現へ向けての道筋を解明
OpenAIの核心研究者2人、ジャクブ・パホツキー(首席科学者)とマーク・チェン(首席研究官)が、a16zのポッドキャストに出演し、同社の次世代目標を明確にした。その核となるのは、「自動研究者」(Automated Researcher)の構築だ。これは、人間の介入なしに新たな知識を発見し、科学の進展を推進するAIシステムの実現を目指す、野心的なビジョンである。 GPT-5の開発理念は、「即時応答型」と「深層推論型」の二極化を解消することにある。過去、ユーザーはどちらのモデルを使うべきか迷っていたが、GPT-5は提示された課題に応じて最適な推論量を自動的に判断する仕組みを導入。これにより、ユーザーの負担を軽減し、AIが「エージェント的行動」を自然に示す一歩を踏み出した。 しかし、従来の評価基準は限界に達していると指摘。パホツキー氏は、「96%から98%への向上は、世界の進歩にとって必ずしも重要ではない」と述べ、評価の焦点を「新事実の発見」にシフトすべきだと強調。数学やプログラミングコンテストでのAIの成績向上が、その兆候として挙げられた。 次世代の評価基準は、AIが数時間から数ヶ月にわたる長時間の推論を継続し、途中で失敗しても再構成し、新たなアプローチを試みる「持続的探求力」にある。この能力は、研究の本質——「正しい問いを立てる」こと——と深く結びついている。 実現の鍵は強化学習とプログラミング能力の融合にある。GPT-5 Codexは、AIが複雑な30ファイルにわたるコード再構成を15分で完遂できるなど、実世界の開発課題に対応する力を強化。これにより、「vibe coding」(雰囲気プログラミング)は既に主流となり、次世代の「vibe researching」への移行が進んでいる。 パホツキー氏は、優れた研究者に求められるのは「粘り強さ」と「自らの仮説に正直であること」だと語る。成功の鍵は、本当に重要だと信じる問題に挑む覚悟にある。チェン氏も、経験から得た「問いの選び方」の直感が、研究の質を左右すると強調した。 組織文化においては、基礎研究を重視し、長期間の自由な探求を支援する環境づくりが成功の要因。多様な背景を持つ研究者を採用し、創造性と実行力の両方を尊重する体制が整っている。 最後に、両氏は「計算リソース」を最大の投資先と明言。AI研究の最大の制約は「算力不足」であり、それは今後も変わらないと断言した。 「自動研究者」の実現は、技術的挑戦と組織的意志の融合によって、着実に前進している。