セールスフォース、収益予想を引き下げながらも利益は予想上回るも株価急落。市場の懸念は将来の成長鈍化に集中。
Salesforceは2024年第2四半期の業績が市場予想を上回ったものの、第3四半期の予想が予想を下回ったことから、株価が4%下落した。売上高は前年比10%増の93.3億ドル、純利益は18.9億ドル(1株当たり1.96ドル)と好調だったが、第3四半期の調整後1株利益予想は2.84~2.86ドル(売上高102.4~102.9億ドル)と、LSEGの予想(2.85ドル、102.9億ドル)をわずかに下回った。この低迷感は、同社がAIへの投資を強化しているにもかかわらず、その収益化が遅れていることに起因している。CEOのマーク・ベンオフ氏は、SNSなどで広がるAIブームの「非現実的な主張」に反論し、「顧客の実態に基づいた真実」が重要だと強調した。 同社はAI戦略の中心として「Agentforce」を展開。このAIエージェントプラットフォームは、顧客向けメールの自動作成、営業プレゼンの生成、マーケティングキャンペーンの立案などを可能にし、発売から10か月で1万2000件の契約を獲得。うち6000件以上が有料契約に。一方で、同社自身もAIによる業務自動化を進めており、カスタマーサポートの従業員数を9000人から5000人に削減。AIエージェントと人間が50対50の割合で業務を担う体制を構築している。 しかし、AIの収益化が遅れる中、市場の信頼は揺らいでいる。今年の株価は23%下落し、ダウ工業株平均の中でも2番目に悪く、大手テック株の中でも最下位に近い。ジェファリーズの分析では、企業価値対自由キャッシュフローの比率が10年ぶりの低水準にまで低下しており、AIによるビジネスモデルの破壊リスクが懸念されている。同社は、AIへの投資を強化しつつ、80億ドルでデータ管理ソフトウェア会社インフォマティカを買収。さらに、株主還元策として200億ドルの株式買戻し計画を追加し、累計500億ドルに拡大。ベンオフ氏は、この資金を新たなM&Aに活用する可能性を示唆した。 一方で、競合のOracleやMicrosoft、MetaはAIの収益化が進み、株価を押し上げている。特にMicrosoftはAzureの成長で4兆ドルの時価総額を一時的に達成。MetaもAIによる広告収益の増加を報告し、株価が上昇した。これに対し、Salesforceは「AIの導入は確実だが、収益化には時間がかかる」との見方が広がっている。連邦準備制度理事会(FRB)の研究でも、生成AIの普及は技術面よりも「人間と企業の採用意欲」にかかっていると指摘されており、広範な導入にはまだ時間がかかる可能性がある。投資家はAIへの期待を「いまは冷めている」と感じており、AIの実力が利益に反映されるまで、同社の株価は下押し圧力が続くと見られる。