AIとロボットで育種の自動化を実現――中科学院が温室作物の高速育種ロボットを開発
中国科学院自動化研究所と中国科学院生物遺伝・発育研究所の共同研究チームが、温室作物の育種・制種プロセスを大幅に加速する全自動化智能育種ロボットシステムを開発した。この成果は8月11日、学術誌『セル』(Cell)にオンライン掲載され、「トマトの花構造を設計することで、交配授粉のロボット化と高速育種を実現」と題した論文として発表された。本研究は、生物学技術(BT)を基盤とし、人工知能(AI)で能力を強化し、ロボットが実作業を行う「BAR(Biological-Technology + AI + Robot)」という新規な智能育種モデルを構築し、従来の人工交配による育種プロセスの根本的な課題を解決した。 従来、温室作物の育種・制種では、異花受粉作物(例:瓜類、アブラナ科)や自花受粉作物(例:ナス科、イネ科)において、雌しべに花粉を正確に付ける作業が人手に依存しており、作業は極めて繊細で時間と労力がかかる。これが自動化の最大の障壁となっていた。 本研究では、異花受粉作物に対して、極小な花部の高精度認識、柔軟な操作、温室内での正確な軌道停駐技術を確立。また、自花受粉作物では、分子育種技術を活用し、柱頭が外露する雄性不育系統を設計。これらの技術を統合し、北京・首農翠湖工場北1区の育種実証基地にロボットを導入。実験では、ロボットの柱頭認識精度が85.1%、1花あたりの授粉時間は13秒、1回の巡回授粉成功率は77.6%±9.4%を達成。さらに、24時間稼働が可能で、複数回の巡行により全花の受粉確率を高められる。 結果として、異花受粉作物では人工授粉と同等の効率を実現。自花受粉作物では、人工より顕著な効率向上を示し、育種サイクルの短縮とコスト低減の可能性を実証した。また、システムは全構成部品の国内調達が完了しており、技術の普及・応用が容易である。 本研究は、生物設計と機械適応の双方向最適化という革新的アプローチを提示し、気候変動への対応や食料安全保障の実現に向けたスマート農業の新モデルを示している。今後は、表型監視や自動収穫など、農業全工程への展開が期待される。 中国科学院自動化研究所の楊明浩副研究員が論文の共同第一著者およびAI・ロボット技術責任者を務め、同研究所の孫楊昌(修士2年)、呂鴻昌(修士3年)、王金陽(修士5年)、肖俊らが視覚認識、操作技術、システム構築に貢献。中国科学院生物遺伝・発育研究所の許操研究員が通訊著者を務め、謝躍、張廷浩が分子育種設計を担当。本研究は、中国科学院戦略先導B類プロジェクト、国家自然科学基金、広西重点研究開発計画などにより支援された。