アマゾンクラウドトップが警鐘「AIで若手社員を置き換えるのは愚策」
アマゾンのクラウド部門を率いるマット・ガーマンCEOは、新人スタッフをAIに置き換えることを「聞いた中で最も馬鹿げた発想」と断じた。アマゾンウェブサービス(AWS)のトップは、10月に公開された「Matthew Berman」ポッドキャストのインタビューで、企業が若手人材をAIに置き換えることは将来の人材育成に深刻なダメージを与えると警告した。彼は、「新人は最もコストが低く、AIツールに最も馴染みやすい存在だ。10年後に、誰も経験を積んだ人材がいなくなったらどうなるのか」と疑問を呈した。 ガーマン氏は、新卒者や若手エンジニアを積極的に採用し、ソフトウェア開発の基本、問題の分解、ベストプラクティスの習得を教えるべきだと強調した。また、AI時代に最も価値あるスキルは特定の学位や専門知識ではなく、論理的思考力、創造性、そして技術の変化に柔軟に対応できる適応力だと指摘。「30年後に通用するスキルを、今から一つだけ極めるつもりなら、それはきっと無意味になる」と述べた。 一方で、AIが若手エンジニアの役割を代替しつつあるとの見方が広がっている。OpenAIのサム・アルトマンCEOは、AIエージェントが既に「初級レベルの同僚」としての役割を果たし始めていると述べており、Googleのチーフサイエンティスト・ジェフ・ディーン氏も、AIが1年以内に初級ソフトウェアエンジニアのスキルを再現できる可能性があると予測している。 経済データも懸念を裏付けている。ゴールドマンサックスの調査によると、20~30歳のテック業界の失業率は2024年初頭から約3ポイント上昇し、全体の失業率上昇の4倍以上。同社のチーフエコノミスト・ジャン・ハッツィウス氏は、生成AIが将来的に米国の労働力の6~7%を置き換える可能性があると予測している。 しかし、GitHubのトーマス・ドームケCEOは、若手エンジニアの価値を否定しない。彼は、若い世代はAIを「新しいもの」として受け入れやすく、既存のやり方を固定化しない柔軟性を持っていると指摘。「彼らは『こうやってきた』という固定観念を持たない。それが強みだ」と語った。 ガーマン氏の主張は、AIの活用と人材育成の両立が、企業の長期的競争力に不可欠であることを示している。