無肥料でも稲の収量を維持する有用根微生物の可能性 この研究では、奈良先端科学技術大学院大学の研究チームが、自然発生する根微生物が無肥料条件下で稲の成長を支える仕組みを解明しました。微生物の多様性や窒素固定細菌の存在が、持続可能な稲作への道を開く可能性を示しています。
微生物が稲の栽培にどう貢献するか——非施肥圃場での収量維持に見られる可能性 世界の人口の半分以上にとって稲は重要な主食ですが、その生産には大量の水や化学肥料が不可欠で、資源集約型であるという問題があります。環境への懸念がますます高まる中、より持続可能な稲の栽培方法を見つける動きが加速しています。 奈良先端 science and technology 大学 (NAIST) の研究チームが、 Plant and Cell Physiology に発表した研究では、自然界に存在する根微生物が稲の成長を支援し、合成肥料の使用を減らす可能性について探りました。研究者たちは、肥料や農薬を全く加えず健康な稲の収量を維持してきた70年以上の歴史を持つ実験畑と、近くにある通常の肥料を使用している畑で育てた稲の根微生物群集を比較しました。 16S rRNA ゲンシーケンス技術を用いて、3種類の日本の稲品種(「にっぽんばれ」、「ヒノヒカリ」、「キナマゼ」)の根に含まれるマイクロバイオーム(微生物群集)のDNAを解析。約1〜4年にわたる生育期間中、每隔2〜3週間ごとにサンプリングを行いました。 分析の結果、稲の生育の進展に伴い微生物の多様性が増加することが確認されました。高収量の非施肥土壌では、植物にとって利用可能な形に大気中の窒素を変換する固有窒素細菌が多く存在していました。これにより、肥料が追加されていない状況でも、稲の成長が維持されています。 さらに、幼苗期には嫌気性細菌が支配的である一方、生殖期や成熟期には好気性および低酸素条件喜好细菌が優勢となる傾向がみられました。これは、一般的な稲の栽培方法における生长期の移行時に田んぼの水を抜くという慣行を反映している可能性があります。 NAIST の斎藤勇介教授は、「今後、これらの有益な細菌を分離し、カスタムの微生物ブレンドとして活用することで、持続可能な稲作が可能になるでしょう」と述べています。 本研究チームには、NAIST の粟谷朝晴、ドミンゲス・ジョン・ユダヤ、藤正昭子、太美雲耀、切田すみれ、今井俊助、尾野直樹、金矢真暁らと、東京大学の神谷武弘、藤原毅、東京工業大学の村上卓三、洪鵬祐、名古屋大学の진城莉奈、東北大学の南澤規馬らが参加しました。 【注】一部の専門用語は省略または解説を付けています。ただし原文の意図や事実関係は維持しています。微生物の働きを詳しく知りたい技術系の読者は、本文中の解説を参照してください。