中国、NvidiaのH20チップにセキュリティ懸念 データ漏洩や追跡機能の疑い、CACが調査へ
中国が米ナビデュエット(Nvidia)のH20 GPUのセキュリティに懸念を示している。米国はH20の中国向け販売を、輸出許可の義務付けなしに認めているが、中国当局はこのハードウェアにユーザー情報の漏洩や隠れた追跡機能が内蔵されている可能性を警戒している。中国サイバースペース管理局(CAC)は、同チップにセキュリティ上の脆弱性がないかを確認するため、Nvidiaに説明を求め、調査のための会議を要請した。 この動きの背景には、米国議会がAIアクセラレータの輸出制限品に追跡機能や位置確認機能の搭載を義務づける法案を提案したことがある。中国当局は、こうした機能が個人情報の危険を増すと懸念しており、実際にはH20にはそのような機能は搭載されていない。H20は2023年の米国による輸出制限を受けて、中国向けに性能を制限したバージョンとして開発された。当初は輸出が一時停止されたが、その後再開され、現在は規制の対象外となっている。 ただし、CACの懸念は技術的リスクよりも、戦略的意図の可能性が高い。中国当局は、米国企業への依存を減らし、国内半導体企業の育成を推進する方針を強化している。Cambricon、Biren、Huaweiといった国内メーカーのAIアクセラレータの導入を促進する動きが活発化しており、米国製GPUの販売を制限する政策の布石ともみられている。 Gavekalのアナリスト、Tilly Zhang氏は、北京は近年、自国の半導体技術への信頼を高めており、海外メーカーに対する姿勢も硬くなっていると指摘。一方で、86ResearchのCharlie Chai氏は、今回の調査が米国への対抗措置としての象徴的行動である可能性が高いと分析。実質的な販売禁止は想定されず、Nvidiaの中国市場での事業は継続すると見られている。 中国は過去にも、米国企業の技術製品にセキュリティリスクを指摘してきた。2023年初頭には、Micronの製品を国家インフラ向けに禁止。Intelに対しても同様の懸念を示したが、実際の規制には至っていない。今回のH20問題も、技術的リスクよりも、産業政策と地政学的戦略の影が大きく、Nvidiaの中国事業に長期的な影響を及ぼす可能性は限定的とみられる。