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花型を編集し、ロボットが自動授粉——中国科学院が世界初の智能育種システム「吉兒」を実現

5日前

中国科学院遺伝学・発生生物学研究所の許操(きょ そう)研究員が率いる智能育種研究チームが、8月11日、国際学術誌『セル』(Cell)に論文を発表し、作物の花形を遺伝子編集で再設計し、AIとロボットを統合した「智能育種」新モデルを世界で初めて実現した。この研究は、バイオテクノロジー(BT)と人工知能(AI)を深く融合し、「作物とロボットの相互設計」を実現する「双向奔赴(両者の協働)」の理念を提唱。その成果として、世界初の自動巡航式雑種交配授粉ロボット「ジール」(GEAIR:Genome Editing combined with AI-based Robotics)を開発。このシステムにより、育種コストの低減、育種サイクルの短縮、効率化が可能となり、農業のスマート化に大きな一歩を踏み出した。 特に、トマトのような花が閉鎖的で柱頭が内側に隠れている作物では、これまで雑種交配の授粉作業が完全に人手に頼っており、人工去雄作業だけで育種コストの40%を占めるなど、コストと労働力の負担が深刻だった。許操チームは、花の雄しべ発生を制御するMADSボックス遺伝子GLO2を標的とした遺伝子編集により、雄しべを開裂させ、花粉を不育化しながら柱頭を自然に外露させる「構造的雄性不育系」を創出。この性状は、果実の収量や種子品質に影響を与えず、トマト育種の歴史的課題を解決した。さらに、この技術は遺伝的背景に依存せず、普遍的な応用が可能である。 この構造型不育系を基に、許操と中国科学院自動化研究所の楊明浩副研究員らが共同開発した「ジール」は、深度学習を用いた柱頭認識技術により、識別精度が85.1%に達し、1花あたり15秒の授粉時間を実現。1回の巡航で77.6%の授粉成功率を達成し、24時間稼働で連続授粉が可能。部品の国内調達率は95%以上に達し、実用化に向けた基盤を整えた。 さらに「ジール」は、2018年に許操が開発した「デノヴォ育種技術」と「高速育種技術」と連携し、近縁野生種の利用を1年で可能に。風味豊かなトマトや耐病性・高収量性を持つ新種質の迅速創出が実現した。 大豆においても、同システムにより構造的雄性不育系の迅速創出に成功。授粉作業の時間は76.2%削減され、大豆の雑種優勢利用の実現と単収の向上に貢献する可能性を秘めている。 本研究は、「BT+AI+ロボット(BAR)」を核とした新しい生物育種のフレームワークを確立し、「AI for Science」の実践的応用として、新質生産力の創出に貢献した。農業分野におけるAIとバイオテクノロジーの融合が、持続可能な食料生産の未来を切り開く。

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