Apple、AI強化へ大規模M&A検討か Thinking Machines Labが有力候補
AppleのAI戦略に向けた動きが注目されている。CEOのティム・クック氏は、AI分野での遅れを補うため、戦略的買収(M&A)を積極的に検討していると明言した。現在、SiriのAIアップデートが遅れており、人材も競合他社に流出している状況にある。こうした中、クック氏は「AIのロードマップを加速するためのM&Aにはオープンだ。企業の規模に縛られず、大きな取引も検討している」と語り、大規模な買収を示唆した。これまでの最大買収額は30億ドルだったことから、今後はより大きな企業をターゲットにすることが予想される。 特に注目されているのは、元OpenAIのCTO・ミラ・ムラティが創業した「Thinking Machines Lab」だ。著名なベンチャーキャピタリストのサラ・グー氏は、「Appleにとって画期的なパートナーシップになる」と評価。個人データと記憶機能を活用したSiriの劇的進化が可能になると指摘。ただし、買収よりも「提携」を推奨し、技術の統合を柔軟に進めるべきだと述べている。 一方、シリコンバレーでは「提携」が買収の前触れになるケースも少なくない。AppleがAI分野で一歩を踏み出すためには、人材と技術を短期間で獲得する戦略が不可欠だ。 また、AIの導入状況には職位による格差が明らかになった。BCGの2025年調査によると、上層部の85%が生成AIを日常的に活用している一方、現場の従業員は51%にとどまる。特に、AIによる職務の置き換えへの不安は、管理職の43%に及ぶが、現場従業員は36%にとどまる。AIの活用は「トップダウン」の傾向が強い。 一方で、AIツールの進化も目覚ましい。ChatGPTの新機能「Study Mode」は、教育用途に特化。単なる情報提供ではなく、問いかけの深さや感情的側面、実生活との結びつきを意識した対話が可能。たとえば、車の購入を検討する際、「車貧困」といった概念を自発的に提示し、予算だけでなく心理的負担も考慮。これは従来のChatGPTとは異なる、学びを促すアプローチだ。 結論として、AppleはAI分野で再び競争力を回復するため、戦略的買収や提携を加速。同時に、AIの導入は組織全体で意識の共有と使い方の工夫が求められる。