軍用の脳機能評価に革新:スマホとVRでリアルタイム認知状態チェックを実現
米軍の兵士たちの脳健康をリアルタイムで評価するための新技術が開発されている。特に、戦闘や訓練による脳震とう(TBI)や睡眠不足などによる認知機能の低下を早期に検出することが求められており、マサチューセッツ工科大学(MIT)のリンカーン研究所の研究チームが、スマートフォンやVR(仮想現実)を活用した2つのツール「READY」と「MINDSCAPE」を開発している。READYは「迅速な勤務注意状態評価」を意味し、90秒以内に視線追跡、バランス、声の安定性を測定して、注意機能の低下を検出するアプリ。MINDSCAPEはVRを用いた包括的な認知評価システムで、反応時間や作業記憶を高精度で測定し、TBIやPTSD、睡眠障害の兆候を特定する。両システムは、脳の予測・フィードバック機能の異常を指標に、従来のテストでは見過ごされがちな微細な認知変化を捉えることが可能だ。 研究責任者トーマス・クワイティエ氏は、注意は任務遂行の鍵であり、脳が感覚情報を予測・処理して身体を適切に動かす能力にかかっていると説明。疲労や脳損傷があるとこのシステムが機能不全に陥り、反応が遅れたり、誤判断を生む。READYの結果が異常と判断された場合、MINDSCAPEに移行し、EEGや瞳孔反応、血流変化といった多モーダル生理データを収集して診断を深掘りする。 これらの技術は、既存のスマートデバイスのセンサーを活用しており、高コストな専用機器の開発を避け、現場への迅速導入が可能。また、特殊部隊向けの「EYEBOOM」(爆風被曝モニタリングウェアラブル)とも連携し、爆発被曝のリスクをリアルタイムで検知し、評価を促す仕組みも構築中だ。 MINDSCAPEはウォルター・リード軍事医療センターで今年、READYは2026年に米軍環境医学研究所(USARIEM)と共同で睡眠不足状態での検証が予定されている。研究チームは、将来的にはスポーツ現場や医療機関など民間分野への応用も視野に入れている。これらの取り組みは、脳健康の包括的・適応型評価を実現する画期的なアプローチとして、軍事と医療の境界を越えて注目されている。