米政府、インテルに89億ドル投資で半導体産業強化へ

米国政府とインテルは、アメリカの技術力と半導体製造のリーダーシップ強化を目指す歴史的合意に達した。この合意により、米国政府はインテル株式に89億ドルを投資し、同社の全株式の約9.9％を保有する。この資金は、これまでにインテルに支給されたが未払いの「CHIPSと科学法」の補助金57億ドルと、セキュアエンクレーブプログラムで支給された32億ドルの合計から調達される。これにより、インテルはこれまでに受領した補助金と合わせて合計111億ドルの支援を受けることになる。 この投資は、インテルが米国内で先進的な半導体技術の研究開発と製造を担っている点を踏まえたもの。インテルは、米国内での半導体生産拡大に100億ドル以上を投じており、アリゾナ州の新工場では今年後半から量産を開始する予定。同社のCEOであるリップ・ブー・タン氏は、「アメリカで最先端の技術を生み出す企業として、インテルは国家の経済的・安全保障の基盤を支えている」と強調。また、米商務長官のホワーラー・ルトニック氏も、「アメリカが人工知能分野で主導権を握るための重要な一歩」と評価した。 政府の投資は非支配的で、取締役会への参加や経営情報の取得権はなく、株主投票も会社の取締役会に従う。ただし、インテルがファウンドリ事業の過半数所有を失った場合に限り、5年間で追加5％の株式を20ドルで購入できる行使権（ワラント）が付与される。また、過去の補助金に関する返還条項や利益還元規定は廃止され、資本の持続性が確保される。 この合意は、マイクロソフトやデル、HP、AWSなど主要テクノロジー企業からも支持を受けている。サティア・ナデラ氏（マイクロソフト）は「米国半導体産業の再建は、アメリカのイノベーションを支える基盤」と述べ、マット・ガーマン氏（AWS）は「AIやクラウドの基盤となる半導体への投資は、技術的・経済的・国家安全保障上の最重要課題」と強調した。 インテルは、過去5年間で1080億ドルの資本投資と790億ドルの研究開発費を米国内に投じており、今後も米国製半導体の強化を推進する。この合意は、アメリカの技術主導体制を再構築する重要な一歩として注目されている。