Nvidiaの1100億ドル投資が警鐘?AIインフラバブルとテレコムバブルの共通点と違い
2025年、NvidiaがOpenAIに最大1000億ドルを投資する計画を発表したことで、過去の通信バブル(1999年)と同様の「ベンダー融資」のリスクが再び注目されている。Nvidiaは合計1100億ドルの直接投資に加え、GPUを担保にした150億ドル以上の債務市場に進出。特にOpenAIへの1000億ドル投資は、10回に分けてインフラ展開の進捗に連動して支払われる仕組みで、支払いの多くはNvidiaに返還されるという構造だ。これに対し、1999年のLucent Technologiesは、AT&TやVerizonなど通信会社に計81億ドルを融資していたが、バブル崩壊で35億ドルの債務損失を計上。その多くは、実際の需要が見合わない中で設備を購入させた「チャネルストッキング」や、隠れた返品権を含む「側面契約」による会計操作が背景にあった。 Nvidiaの状況は異なる点も明確だ。まず、顧客の集中度が極めて高い。Nvidiaの売上39%が2社、46%が4社に依存しており、Lucentの23%を大きく上回る。一方で、Nvidiaの主要顧客(Microsoft、Google、Amazon、Meta)は安定した収益を上げており、2024年に合計4510億ドルの営業キャッシュフローを生み出している。OpenAIも赤字だが、その半分以上は株式報酬によるもので、実質的な現金損失は限定的だ。また、AIはすでに米国の40%の労働者が業務で活用しており、生産性向上や賃金上昇の兆しも見られる。 ただし、リスクは存在する。GPUを担保とする債務市場(約100億ドル以上)は、GPUが6年間価値を維持すると仮定しているが、実際のデータセンターでの使用寿命は1〜3年程度にとどまる。また、AmazonやMetaがサーバーの償却期間を6年から5年に短縮するなど、会計上の見直しが進んでおり、資産価値の過大評価の懸念がある。さらに、MicrosoftやGoogle、Metaが自社AIチップ(Maia、TPU、MTIA)を開発しており、Nvidia依存の減少が進むと、GPU担保価値が下落するリスクも生じる。 また、ハイパースケーラーは特殊目的法人(SPV)を通じてデータセンターを建設し、債務をバランスシートから外す戦略を採用。これにより、実際の負債は見えにくくなるが、利用率が下回れば、資本の損失が迅速に発生する。 結論として、Nvidiaの戦略はLucentの「会計操作+需要幻想」のパターンとは異なり、実際の収益とAI需要に基づくものだ。しかし、GPUの短期寿命、顧客集中、自社チップ開発の進展というリスクは、将来の「AIバブル」崩壊の引き金になり得る。今後の焦点は、GPU利用率、OpenAIの収益化、そして自社チップへの移行の速度だ。