Pocket FM、AIツール「CoPilot」を導入し作家の生産性を50%向上
インドを拠点とする音声シリーズプラットフォーム「Pocket FM」が、作家たちにAIツールを提供し、物語の構成やクライマックスの演出、エピソードの改善を支援している。同社は「音声のNetflix」を目指しており、ユーザーの好みに合わせて数百話に及ぶコンテンツを迅速に提供する必要がある。その実現に向け、同社はAIを活用した「CoPilot」と呼ばれる一連のツールを全作家に導入した。 CoPilotは、物語を対話形式に変換したり、特定ジャンルに最適な展開(「ビート分析」)を提案したりする機能を備える。また、「要約」「拡張」「短縮」などのチャット型操作や、キャラクターのプロフィール・関係性・エピソードの要約を自動生成する機能も搭載。さらに、プロットの整合性や文法ミスをチェックし、質的なフィードバックを提供するレビューツールも内蔵されている。 このツールは、数千時間分の視聴データを分析して構築され、ユーザーの関与を高める要素(たとえばキャラクター間の対立の強化や、より引き込まれるエンディングの提案)をAIが学習。背景効果のタグ提案や、ストーリーの文脈を維持するための小規模モデルの訓練も行っている。ユーザーの行動データを活用し、ドラマチックな展開を促すようにAIを調整する仕組みも導入している。 国際展開においては、ドイツ市場でAIによるローカライズツールをテスト。翻訳に加え、名前や表現を現地文化に合わせて変更する機能を搭載。その結果、月間内訳収益が70万ドルを超えるまでに回復し、市場参入までの期間が12〜18か月から3か月以内に短縮された。ドイツでは作家の生産性が最大50%向上し、エラーの少ない原稿作成が可能になった。 米国市場でも、AI支援コンテンツが再生時間の10%を占め、過去12か月で700万ドルの収益を上げ、制作コストは2〜3倍削減された。同社は今後、自社の大型言語モデル(LLM)を来年中にリリース予定。既存の小規模モデルを統合し、執筆支援、ローカライズ、ドラマ化、文脈保持を一つのモデルで実現する。 一方で、AI導入による影響も生じている。過去12か月間に複数回の人員削減が行われ、一部の作家からは報酬の減少が報告されている。また、カリフォルニア州では労働条件に関する訴訟が提起されている。同社は「AIはコアクリエイターに大きな影響を与えていない。むしろ、コンテンツの規模とリーチを拡大する新たなチャンスを提供している」と反論している。 品質面では、AI生成コンテンツが「AIスロップ(低品質コンテンツ)」として混入するリスクがあるとの懸念も。同社はAIによるモデレーションフレームワークで、重複、著作権、コンテンツの健全性などをチェックし、すべての作品に均等な露出を提供。最終的なランキングはユーザーのエンゲージメント次第と説明している。 同社は、AIの導入により作家の役割が「原稿作成」から「編集・調整・戦略的指揮」へとシフトすると説明。結果として、量の増加と質の維持は両立可能だと主張している。