MetaのAIスーパーエンジニアの責任者に新任された趙昇嘉氏について、CEOのAI科学者ヤン・レクンが自身の役割を明確にした。
メタはAI分野での競争力を高めるため、新たなAI研究部門「スーパーアイテクノロジー・ラボ(MSL)」を設立し、シャンジア・チョウ氏を首席科学者に任命した。チョウ氏は、チャットGPTやGPT-4、AI推論モデル「o1」の開発に貢献した元オプンAIの研究者で、メタのAI戦略に大きな影響を与える人物として注目されている。メタCEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、チョウ氏がMSLの設立に携わり、研究方針を主導すると発表し、同社のAIリーダー層を強化したことを強調した。ザッカーバーグ氏は、チョウ氏の「スケーリングの新パラダイム」の研究を評価し、メタがAI推論モデルの開発に注力する姿勢を示した。 MSLはメタのAI研究全体を統括する部門で、FAIR(Fundamental AI Research)や基礎技術、製品チームを含む。ザッカーバーグ氏は、MSLが「誰もが使えるスーパーアイテクノロジー」の開発を目指すと述べており、長期的な研究に加え、実用化への視点も重視している。一方、FAIRは長期間にわたるAI技術の研究を目的とし、ヨアン・レクン氏が率いる。レクン氏は、メタのAI研究の柱として知られ、世界モデルなどの次世代AI技術の開発に注力している。ザッカーバーグ氏とアレクサンドル・ワン氏(メタのAI最高責任者)は、レクン氏の役割が変更されないことを確認した。 チョウ氏の任命は、メタがAI分野で優れた人材を獲得する動きを強化した。同社は、オプンAI、グーグル・ディープマインド、アップル、アントロピックなどから高レベルな研究者を多数引き抜き、MSLのチームを構築している。また、ザッカーバーグ氏は個人的なメールや、レイク・タホの別荘での面談を通じて、研究者を直接誘致する戦略を取っている。一部の研究者には、数日以内に有効期限が切れる「爆発的なオファー」が提示されているとされる。 MSLは、2026年までにオハイオ州に設置される1ギガワット規模のクラウドコンピューティングクラスター「プロメテウス」にアクセスできる予定で、これにより大規模なAIモデルのトレーニングが可能になる。この規模は、メタがAI開発において重要なインフラを整えることを示しており、競合企業と対等に渡り合える体制を整えている。 チョウ氏の任命は、メタのAI研究の方向性を示す転機となった。MSLは短期的な実用化と長期的な技術革新の両方を追求するが、FAIRとの関係性や、各部門の連携は今後さらに明確化される必要がある。レクン氏とチョウ氏の二頭体制は、メタのAI研究をより強固にし、オプンAIやグーグルとの競争に備えるものとみられる。