OpenAIが米国政府向けにChatGPTを実質無料提供し、積極的な導入を推進している。
OpenAIが米国連邦政府機関へのAIツール導入に大きく前進し、競合企業であるAnthropicやGoogleをリードする形で、政府部門でのAI活用を加速している。同社は米国一般サービス庁(GSA)と協定を結び、連邦行政機関すべてに「ChatGPT Enterprise」を1年間、1機関あたり1ドルという極めて低価格で提供することになった。この取り組みは、GSAがAIベンダーを認定する「マルチアワードスケジュール(MAS)」にOpenAI、Google、Anthropicを追加した直後に行われた。MASは政府機関が個別交渉せずにAIツールを迅速に導入できる仕組みであり、今回の承認により、連邦機関がこれらのAIモデルを簡便に利用できる環境が整った。 OpenAIの特別価格は、トランプ政権が7月に発表した「AIアクションプラン」の柱の一つと位置づけられている。このプランは、AIの政府内導入を加速し、データセンターの整備を推進、また米国産AIの国際展開を図ることを目指している。同社のサム・アルトマンCEOは、「AIがすべての人に役立つためには、国を支える人々の手に届くべきだ」と強調。政府職員が業務効率化を図り、国民サービスの質を向上させることを目的としている。 さらに、この提携には価格以上の付加価値が含まれる。連邦職員は、先進モデルの無制限利用(60日間)、政府専用のユーザーコミュニティ、およびOpenAIアカデミーによる専門トレーニングを受けることができる。データセキュリティ面では、GSAの発表によると「政府データはモデルの学習に使用されず、機密情報が漏洩するリスクを最小限に抑える」と明言。政府機関が懸念する「データ漏洩」問題への対応が、この提携の信頼性を支える重要な要素となっている。 既に、ペンシルベニア州政府の試験導入では、職員が1日平均95分の業務時間を削減した実績がある。また、空軍研究所やロスアラモス国立研究所など、複数の機関で行政業務や科学研究にChatGPTが活用されている。2024年1月に導入された「ChatGPT Gov」は、すでに3,500以上の政府機関、9万人以上のユーザーが利用し、1800万件以上のメッセージが送信されている。 一方で、アルトマンCEOがトランプ政権との関係を強化しており、2024年6月には大統領との一対一会談や、ゴルフクラブでの夕食会を経験。トランプ氏は彼を「非常に優れた人物」と評している。この政治的連携は、AI政策の方向性に影響を与える可能性も示唆している。 背景として、政府機関はAIの導入に際し、セキュリティと「イデオロギー中立性」を重視しており、特に「ウォークAI」(政治的偏見を含むAI)の排除が求められている。OpenAIの低価格提供とデータ保護の明確な方針が、競合他社との差別化を図る上で大きなアドバンテージとなっている。