Tesla、Dojo超計算機プロジェクトを終了へ AI6チップに戦略集中
エロン・マスク氏が、テスラが自社開発のAI学習スーパーコンピュータ「ドージョ(Dojo)」の開発を終了したことを公式に確認した。マスク氏はX(旧Twitter)に投稿し、「すべての技術的経路がAI6に収束することが明らかになったため、ドージョ2は進化的な死活ラインに達しており、人員の再編を含む厳しい選択を迫られた」と説明。ドージョ3は、単一の基板に多数のAI6チップを搭載した形で「生きている」と述べ、新たなアーキテクチャの継続を示唆した。 ドージョは、2019年からマスク氏が提唱する自社AI戦略の柱として位置づけられ、完全自動運転と人型ロボットの実現を目指して開発が進んでいた。当初はNVIDIAのGPUと自社開発のD1チップを組み合わせた第一世代を稼働させ、第二世代である「ドージョ2」は第二世代D2チップで動く予定だった。しかし、D2チップの開発は中止され、テスラはAI5とAI6チップへの集中戦略に転換。AI5はFSD(完全自動運転システム)向け、AI6は車載推論と大規模AI学習の両方を担う設計だ。AI6はTSMCとサムスンで製造され、マスク氏は「AI5/AI6チップを多数基板に搭載することで、ネットワークケーブルの複雑さとコストを桁違いに削減できる」と強調した。 この変更は、2024年8月以降、マスク氏が「アトランタ本社で建設中の巨大AIトレーニングクラスタ・コルテックス(Cortex)」を打ち出し、ドージョの話題が消えることと重なる。コルテックスの開発状況や、ニューヨーク州バッファローに5億ドルを投資して建設したドージョ施設の行方については、テスラ側からの回答は得られていない。 テスラはEV販売の低迷とマスク氏の政治参加によるブランドイメージの損なわれた状況下にあるが、マスク氏は「自動運転の未来は依然としてテスラの核心」と主張。2024年6月にオースティンで開始したロボタクシーの限定運用は、多数の異常運転報告を受けており、実用化の道のりは依然として険しい。しかし、AI6チップとコルテックスを軸とした新たな戦略により、テスラは自社AIインフラの再構築を進めている。