グーグル社員にAI活用が必須に 開発者向けガイドライン刷新で生産性向上を強調
グーグルの社員たちにAI活用の圧力が高まっている。2024年5月20日、カリフォルニア州マウンテンビューで開催された同社の年次開発者カンファレンス「I/O」で、CEOのサンダー・ピチャイ氏は、社員がAIを業務全般に活用しなければ、グーグルの競争力が失われるとして強いメッセージを発信した。この動きは、グーグルがOpenAIやマイクロソフトとのAI競争でリードを保つための戦略の一環である。 最近では、ソフトウェアエンジニア向けに、AIを用いたコード作成を義務づける内部ガイドラインが策定された。エンジニアの役割定義にもAI活用が明記され、社内モデルのみを用いたコード生成が推奨されている。外部AIツールの使用には事前承認が必要で、社員が生成したコードは個人の責任として、グーグルの品質基準を満たさなければならない。また、社内開発ツール「Cider」や、内部データで訓練された「Gemini for Google」(旧「Goose」)の導入も進んでおり、社員は新製品の内部試用(ドッグフーディング)を義務付けられている。 ピチャイ氏は、AIによる生産性向上を実証しており、エンジニアのコード作成の10%以上がAIによって生成され、2025年Q1時点で新規コードの30%以上がAI生成と報告。同社はAI開発企業「Windsurf」の主要メンバーを24億ドルで買収(アキヒア)し、AIによる「エージェント型コーディング」の強化を図っている。 一方で、社内ではAI活用の義務化に疑問を呈する声も。一部の社員は、AIを「役職要件」に盛り込むことへの皮肉をMemeGenという社内掲示板で発信。例えば、「AIが本当に生産性を高めるなら、役職要件に書く必要はない」というコメントが相次いだ。また、一部の社員は「前向きに使いたい人もいるが、出遅れたくないから仕方なく使っている」と語り、強制的な導入にやや不満を示す声もあった。 一方で、営業や法務部門でもNotebookLMやカスタムAI「Gem」の活用が促進され、AIを活用した業務効率化が社内文化として定着しつつある。競合他社も同様の動きを強めている中、グーグルは「AIを協働パートナー」と位置づけ、社員が創造的・戦略的な業務に集中できる環境づくりを進めている。