19歳のインド人少年が旧金山でAI記憶アプリ「Supermemory」を創業し、Googleのジェフ・ディーンらが投資。AIの記憶力不足を解決する新技術に注目が集まる。
19歳のインド出身の起業家、ドラヴィヤ・シャー(Dhravya Shah)が米国でAIの「記憶力」を革新するスタートアップ「Supermemory」を立ち上げ、260万ドルのシード資金を調達した。彼はかつてインドのインディアン・インスティテュート・オブ・テクノロジー(IIT)受験準備中だったが、自ら開発したツイート自動フォーマットツールをSNSツール「Hypefury」に売却し、その収益をもとにアメリカのアリゾナ州立大学に進学。米国に移住後、40週間にわたり毎週新しいプロダクトを開発するチャレンジを行い、その中で「Any Context」としてGitHubに公開したのがSupermemoryの原点だった。当初はX(旧Twitter)のブックマークと対話できるツールだったが、現在は多様な非構造化データ(メール、PDF、チャット、プロジェクトデータなど)から「記憶」を抽出し、AIアプリに個別化された文脈を提供する「AIアプリの普遍的記憶API」として進化している。 Supermemoryは、AIモデルの「コンテキストウィンドウ」の限界を補う仕組みとして、知識グラフを構築し、月単位の記録を検索可能にしている。たとえば、日記アプリで1か月前の内容を参照したり、動画編集ソフトで特定のシーンに関連する素材を自動検索したりできる。Chrome拡張機能も提供され、ウェブページから簡単にメモを保存可能。多モーダル対応により、テキストだけでなく画像や動画データも処理可能で、AIビデオ編集ツールやロボットの視覚記憶保持にも応用されている。 2024年、CloudflareでAIインフラのインターンを経て、開発者関係リードを務める中で、CTOのデイン・クネヒトらの提言を受け、Supermemoryを本格的な製品化。現在はa16z支援のデスクトップアシスタント「Cluely」、AI動画編集ツール「Montra」、AI検索エンジン「Scira」など複数の企業と提携。投資陣も豪華で、Susa Ventures、Browder Capital、SF1.vcがリード。個人投資家にはGoogle AIのジェフ・ディーン、DeepMindのロガン・キルパトリック、Sentry創業者デイビッド・クレイマー、OpenAI・Meta・Googleの幹部らが名を連ね、Y Combinatorの参加も検討されたが、既に資金調達済みで断念。 競合は多数存在。Felicis Ventures支援のLetta、Mem0、SamsungとSusa Venturesが投資するMemories.aiなどがあるが、シャーは「低レイテンシ」を強みに掲げ、高速な文脈抽出を実現。彼のビジョンは、AIが「会話の記憶」を持つことで、より自然で持続可能なインタラクションを可能にすること。業界では、記憶と効率の向上がAIの未来を左右するとされ、Supermemoryはその鍵を握る可能性を秘めている。一方、プライバシー規制や倫理的懸念も課題。シャーは製品設計段階から倫理基準を重視しており、今後の成長に向け、大手企業との連携やM&Aの道も視野に入れている。若き天才の挑戦が、AIの「記憶」をどう変えるか、注目が集まる。