CUDA-QX 0.4で量子誤り訂正のワークフローを加速、テンソルネットワークデコーダーとGQEも搭載
NVIDIAが公開したCUDA-QX 0.4は、量子誤り訂正(QEC)と量子アルゴリズム開発の効率化を目的とした重要なアップデートを含む。量子コンピュータの商業実用化に向け、誤り訂正は最大の課題であり同時に最大の可能性とされる中、CUDA-QXは研究者が一貫したエンドツーエンドのワークフローを迅速に構築できるように支援する。このバージョンでは、メモリ回路から検出器誤りモデル(DEM)を自動生成する機能が追加され、シミュレーションとデコーディングの両方に同一のDEMを使用可能に。これにより、重複した処理を回避し、開発の整合性と効率が向上する。 また、正確な最大尤度デコーディングを実現するテンソルネットワークデコーダーがPython 3.11以降に対応して導入された。これは訓練を必要とせず、理論的に正確な結果を出力できる点が特徴。実際のデータセットを用いた評価では、グーグルの公開デコーダーと同等の論理誤り率(LER)を達成しており、オープンソースで利用可能な高性能実装として注目される。 BP+OSDデコーダーも強化された。反復回数の収束チェック間隔を動的に設定できる「adaptive convergence monitoring」、数値安定性を高める「message clipping」、最適化の高速化を実現する「dynamic scaling」機能が追加。さらに、ログの記録機能により、デコーディング過程における対数尤度比(LLR)の変化を詳細に監視可能となり、研究の透明性と再現性が向上。 さらに、AIを活用した量子回路設計アルゴリズム「Generative Quantum Eigensolver(GQE)」がSolversライブラリに実装された。従来のVQEと異なり、生成モデル(Transformerベース)が回路構造自体を設計するため、バレンプレート問題の回避が期待される。小規模シミュレーション向けのコスト関数も提供され、今後の研究開発の基盤となる。 CUDA-QX 0.4は、量子誤り訂正の実験を加速し、AIと量子技術の融合を推進する重要な一歩。開発者はGitHubでリリースノートやドキュメントを確認し、フィードバックや貢献が可能。