OpenAI、教育現場で「生産的な苦闘」を促すAIツールを展開へ
OpenAIの教育部門責任者、レア・ベルスキー氏は、学生がChatGPTを単なる「答えの機械」として使うべきではないと強調している。2024年から同社教育チームを率いるベルスキー氏は、AIはあくまでツールであり、その使い方次第で学びの質が大きく変わるとして、教育現場での適切な活用を訴えている。彼女は、AIの導入は「生産的な苦闘」を促すものでなければならず、単に答えを出すだけの使い方では学びが浅くなると指摘。教育の本質は、知識を「得る」ことではなく、「深く理解し、創造的に活用する力」を育てることだと述べた。 現在、多くの学校はAIの使用を禁止する傾向にあるが、それは「不正行為」との懸念、および「脳の衰え(brain rot)」という批判から来ている。しかしベルスキー氏は、AIを「電卓」と同じように位置づけ、学生が自然に使う習慣を早期に身につけさせるべきだと主張。特に、AIを使ってコードを書く「バイブコーディング」の普及に伴い、すべての学生がAIを活用して画像生成やアプリ開発、プログラミングを学ぶべきだと語っている。 この問題に対応するため、OpenAIは「スタディモード」を導入。この機能は、学生の理解度や学習目標に応じて、誘導的な質問を提示し、深い理解を促す仕組みとなっている。また、スタートアップのKira Learningも、Google Brainのアンドリュー・ン氏が支援する教育AI企業として、学習の途中で適切な「摩擦」を加えることで、生産的な苦闘を促すAIエージェントを開発している。 大学教育の現場でも、ジェームズ・マサチューセッツ大学のエコノミスト、タイラー・カーウェン氏は、「成績を取ること」に価値を置く教育システムは、AI時代に適応できず、そのスキルはすでに obsolete(陳腐化)していると指摘。教育の根本的な見直しが求められている。AIは学びを奪うのではなく、学びを変えるべき存在である――ベルスキー氏の主張は、こうした潮流を象徴している。