GPT-5の企業向け進出が加速、性能と価格でAnthropicに追撃
OpenAIが先週発表した最新AIモデル「GPT-5」は、一般消費者向けの体験はやや不評に終わったが、企業向け市場では急速に勢力を拡大している。当初、ユーザーインターフェースの直感性に欠け、一部の利用者から批判が相次いだため、同社は有料ユーザー向けに旧モデルのGPT-4を再導入する措置を取った。しかし、GPT-5の本質的な目的は消費者市場ではなく、企業向けのAIソリューション市場を獲得することにある。 特に、競合のAnthropicが長年優位を保っていたコード生成やインターフェース設計分野で、GPT-5は急速に追い上げを見せている。AI開発ツールのCursorやVercel、Factoryなどのスタートアップは、GPT-5を主要製品のデフォルトモデルに採用。VercelのCTOであるMalte Ubl氏は、「以前はClaudeが圧倒的に優れていたが、GPT-5は競争力を持ち始めた」と評価。特にプロトタイピングや製品設計の初期段階では、創造性と精度の面で優れていると述べた。 また、企業向けの複雑な業務処理にも強みを発揮。Boxのアーロン・レヴィCEOは、GPT-5が100ページを超える契約書や製品開発ロードマップといった論理的・文書的タスクで、従来モデルでは難しかった推論を正確に実行できることを確認。「AIが仕事の背景で自動的にタスクを実行する上で、これは画期的な進歩」と評価した。 開発者や企業が重視する価格面でも、GPT-5は有利な位置にある。推論コストの低下により、ユーザーはより自由に試行錯誤できるようになり、実験的な利用が活発化している。LovableのCEOアントン・オシカ氏は、GPT-5が「より積極的に行動し、その結果を検証する」能力を持ち、複雑な課題でもより正確に成果を出すと述べた。 一方、Anthropicも企業市場で広範な展開を進め、AmazonやGCP、Snowflake、Palantirなどに組み込まれており、顧客平均支出は1年で5倍以上に拡大。ただし、OpenAIは自社の企業営業チーム(500人以上)を強化し、Microsoft Azureとの連携に加え、直接APIを提供する形で企業顧客を獲得。GPT-5のAPI利用は発表後、コード生成やエージェント構築、複数ステップ推論の分野で2倍以上、8倍以上の急増を記録。 結局のところ、GPT-5の真の勝利は消費者の評価ではなく、企業の業務効率化と自動化における実力の証明にある。OpenAIは、AIの「本番の舞台」を企業市場に移し、今後の競争を制する鍵を握りつつある。