ザッカーバーグが提唱する「個人用スーパーアイ」戦略の真意:AIが生み出す自由時間をメタが支配する
マーク・ザッカーバーグが提唱する「個人用スーパーインテリジェンス」戦略は、AIが生産性を高めるだけでなく、人々の自由時間に新たなコンテンツや体験を満たすことを目指している。Metaは、ChatGPTが「作業を代行するスーパーアシスタント」としての競争を続ける中で、自社の強みである「注目を集める力」を活かす戦略を転換した。ザッカーバーグは、AIが人々の生産活動を効率化すれば、その分、創造や人間関係の構築に時間を割くようになると予測。その中で、自分自身を深く理解し、目標をサポートする「個人用スーパーインテリジェンス」が最も価値ある存在になると主張した。 この戦略の背景には、MetaがAIでChatGPTに勝つ試みが実を結ばなかったという現実がある。そのため、同社は「生産性」ではなく、エンタメ、友人とのつながり、生活の質といった分野に焦点を当てる。MetaのCPO、クリス・コックス氏は、社内ミーティングで「AnthropicやOpenAI、Googleが生産性に集中する中、我々はエンタメや人間関係に特化する」と明言。AIを活用して、よりパーソナライズされた広告、自動生成Reels、AIキャラクターとの対話などを通じて、ユーザーのエンゲージメントを最大化する計画だ。 また、AI人材の獲得には高いインセンティブを提示。ザッカーバーグは、上場企業並みの報酬を提示するが、これは通常のRSUではなく、業績連動型のストックユニットであり、早期離職時には報酬の返還も可能という条件付き。これにより、人材確保は容易ではないとされる。 一方、FigmaのIPOを前に、AIが設計ツールの必要性を低下させるか、あるいは強化するかが注目されている。同社のCPO、山下雄輝氏は、「チームでの意思統一やアイデアの洗練」がAI時代でも価値ある活動だと強調。設計の「協働性」がAI生成ツールに勝る差別化要素になると見ている。同社は今後、AI関連スタートアップの買収も視野に入れている。 最終的に、Metaは「AIが生み出す自由時間」を、自社のエコシステムで埋める戦略を貫く。これは、AIの進化に伴う社会的変化を、エンゲージメントと収益化の観点から捉えた、極めて現実的な戦略である。