AIが晚期診断を解消する――アトロポス・ヘルスとノバルティスが希少疾患の早期発見モデルを共同開発

アトロポス・ヘルス（Atropos Health）は、ノバルティスと戦略的提携を締結し、人工知能（AI）を活用して希少疾患の診断までの時間を短縮する取り組みを開始した。この提携では、リアルワールド臨床データ（RWD）と長期にわたる患者記録に基づいたAIアルゴリズムを開発・訓練・評価し、まだ診断されていない希少疾患患者の早期発見を支援する。初の対象疾患として、診断に平均1年以上かかることがある「発作性夜間血色素尿症（PNH）」に焦点を当てている。 PNHは、骨髄にある造血幹細胞に獲得的な突然変異が生じ、赤血球が補体系によって異常に破壊される希少で重篤な血液疾患。世界で約10～20人／100万人が罹患するとされ、30～40歳代に多く発症するが、症状が多様で他の臓器にも影響を及ぼすため、診断が難しく、多くの患者が長期間の猶予を余儀なくされている。 アトロポス・ヘルスは、この提携を通じてPNHの潜在患者を特定する初期のAIモデルを構築。このモデルは、アトロポス・エビデンス・ネットワーク（Atropos Evidence Network）に蓄積された高品質なリアルワールドデータ（GENEVA OS®を含む）を基に訓練され、医療機関の診療現場にシームレスに統合可能。これにより、医師が症状報告から検査・診断・治療へと迅速に進める環境が整備される。 アトロポス・ヘルスのブライトン・ハイドCEOは、「AIモデルに高品質なリアルワールドデータを用いることは、精密医療の次世代の柱だ」と強調。早期に検査を受けられる患者は、命を救う可能性が高まり、医療機関にとっても患者満足度の向上につながると述べた。 ノバルティス米国がオンコロジー部門を担当するロッドニー・ギルスピー氏も、「AIと機械学習で診断を加速することは、患者の治療開始を早め、生活の質を大きく向上させる」と評価。この提携は、精密医療の実現と、診断遅延の是正という共通の目標を共有している。 アトロポス・ヘルスは、アーカディアとの協業を通じて、医療機関に最先端のケアプロトコルとAI駆動の意思決定支援を提供。また、MOTOR、CLMBR、FoundationといったAIモデルの構築も進めており、データ駆動型医療の普及を推進している。