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AIが5000種の分子から「抗撕裂性最強」の二茂鐵化合物を発見、プラスチックの強度が4倍に

3日前

麻省理工学院(MIT)とデューク大学の研究チームが、AIを活用して5000種類の分子から「抗撕裂性に優れた交換基」を発見し、プラスチックの強度を4倍に向上させる成果を上げた。本研究で注目されたのは、外力によって構造や化学的性質が変化する「力応答基団(mechanophores)」で、特に有機金属化合物の二茂鐵(ferrocene)系が注目された。研究の主導者であるMITのヘザー・クルィック教授は、「外力が加わっても破断せず、高い弾性を示すポリマー材料の開発が可能になる」と述べた。 研究は、2023年に同チームが発見した「弱い結合を導入することで全体の強度が向上する」という現象を基盤としている。そのメカニズムは、裂け目が強固な結合を避け、弱い結合を優先して破壊することで、材料全体にかかるエネルギーを分散させるというもの。この特性を活かすため、研究チームは二茂鐵の化学構造を系統的に探索。5000種類の既存の二茂鐵構造をデータベースから抽出し、約400種を力場計算で評価。その結果、分子内の結合が外力でどの程度早く切れやすいかを定量的に把握した。 その後、これらのデータをもとに機械学習モデルを構築。残りの4500種の既知構造と7000種の派生構造について、機械的応答の閾値を予測。その結果、二茂鐵環上の置換基の相互作用と、両環に大きな置換基が結合している場合に、力応答性が顕著に向上することが判明。特に「二つの環に大規模な置換基が存在する」という特徴は、従来の化学的予測をはるかに超える発見であり、AIなしでは発見できなかった。 研究チームは、特に注目されたm-TMS-Fcという交換基を用いてポリマーを合成。実験結果では、従来の二茂鐵交換基を用いた材料と比べ、抗撕裂性が4倍に向上。この成果は、プラスチック製品の寿命を延ばし、廃棄物削減に貢献する可能性を秘めている。 今後、このAI駆動の探索プラットフォームは、色の変化や触媒活性のオン・オフを外力で制御する力応答分子の開発にも応用される予定。特に、過渡金属を含む力応答基団の研究は未開拓領域であり、今回の手法がその発展を加速すると期待されている。

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