次世代電子機器向け2D材料を83種発見、新しい予測手法が実用化へ
米メリーランド大学バーリングトン校(UMBC)の研究チームが、次世代電子機器に向けた有望な2D材料を効率的に見つけるための新しい予測方法を開発した。この研究は、2025年7月7日に「Chemistry of Materials」に掲載された。2D材料は、数層の原子からなる非常に薄い物質で、電子デバイスの性能向上に期待されている。研究は、従来の方法よりも速く新材料を発見できる可能性を示している。 研究を主導したUMBCの化学科博士課程学生であるペング・ヤン氏と、同大学の助教授ジョセフ・ベネット氏は、van der Waals結合を持つ層状リンチャルコゲナイドという2D材料に焦点を当てた。これらの材料は、電気を蓄える能力や磁気特性を持つものがあり、メモリーやセンサーなどの高度な電子デバイスに適している。現在、このような構造を持つ2D材料はわずか2種類しか知られていないが、研究チームは新たな候補を発見する方法を開拓した。 研究では、データマイニングとコンピュータシミュレーション、構造解析を組み合わせ、材料の原子構造を基にした量子的な構造図を用いて、新規な2D材料を特定した。この手法により、電気陰性度や原子半径といった基本的なパラメータを分析し、望ましい特性を持つ材料を効率的に見つけ出すことが可能になった。この研究で、83種類の新規な2D材料が候補として挙げられ、その一部はすでに実験室で合成に成功している。 UMBCのチームは、メリーランド大学コリッジパーク校(UMD)の研究者と協力し、予測された材料を実験室で作成し、性能を確認した。この方法は、新しい材料の開発にかかる時間とコストを大幅に削減できると期待されている。今後、チームは高スループットの密度汎関数理論シミュレーションを使って、これらの材料の特性をさらに詳しく調べる予定だ。その結果、軍事用センサーや長時間使用可能なモバイル機器など、実用化に向けた応用が期待されている。