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LCLS-IIアップグレードでX線レーザー観測が飛躍進化、量子材料から分子反応まで瞬時に解明へ

4日前

米国エネルギー省が運営するスタンフォード線形加速器研究所(SLAC)のX線レーザー施設「LCLS」が、大幅な性能向上を遂げた。LCLS-IIのアップグレードにより、X線パルスの発生頻度が1秒間に120回から100万回に拡大され、1万倍以上の高速化が実現した。この変化により、原子や分子の動きを高精細で観測する新しい実験が可能となり、従来では不可能だった科学的探求が現実のものとなった。 特に注目されるのは、量子物質や化学反応を精密に解析するための新規・改良型装置群の導入だ。qRIXSとchemRIXSの2つの新装置は、共に「共鳴非弾性X線散乱(RIXS)」という技術を活用。前者は結晶材料の量子ダイナミクスを、後者は液体中の化学反応を高分解能で捉える。従来、X線のほとんどがサンプルで吸収され、検出器に届くのは数億分の1に過ぎなかったが、今や1秒間に数万回のパルスが供給されるため、データ取得が数分から秒単位で可能に。これにより、材料内部のエネルギー伝達や原子間相互作用の「動画」をリアルタイムで観測できるようになった。 qRIXSは12フィートの回転式分光器を備え、高臨界温度超伝導体の研究に活用されている。この理解は、次世代の量子コンピュータや高効率MRI、無損失電力網の実現に繋がる可能性がある。一方、chemRIXSは希薄な溶液を対象に、光合成の途中段階や溶媒の化学挙動をリアルな条件下で解析できるようになった。 また、時間分解型原子分子光科学(TMO)実験ステーションでは、電子の放出や分子の「爆発」を捉えるための新装置が導入された。MRCOは16個の電子検出器を円形に配置し、分子内の電荷移動をナノ秒スケールで詳細に測定。DREAM(Dynamic REAction Microscope)は、1つの分子をX線で「爆発」させ、破片を解析して分子反応の高解像度な「ムービー」を再構築する。従来、1フレームの取得に1週間を要したが、今や数日で多数のフレームが得られるようになった。 これらの革新は、AIによるデータ解析との連携も促進。膨大なデータを迅速に処理し、新材料探索やビームラインの自動調整に活用される。SLACの研究責任者マティアス・クリンク氏は、「AIとLCLSの融合が科学の進展を加速する」と指摘。LCLS-IIのアップグレードは、物質の最小スケールでの現象を解明するための新たな時代の幕開けを示している。

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