AIが不平等・無効な契約条項を自動検出　NYUが新ツール「ContractNerd」を開発

ニューヨーク大学（NYU）の研究チームが、雇用契約や賃貸契約に含まれるリスクの高い条項を自動で発見するAIツール「ContractNerd」を開発した。このツールは大規模言語モデル（LLM）を活用し、契約文書内の条項を「欠落している条項」「無効な条項」「法的に問題のない条項」「法的には許容されるがリスクのある条項」の4カテゴリーに分類。特にリスクのある条項は「高リスク」「中リスク」「低リスク」の3段階で評価する。 たとえば、「退去の意思を『適切な時期』に書面で通知すること」という表現は「適切な時期」が定義されていないため曖昧で、トラブルの原因になりやすい。また、「退職後2年間、米国内のいかなる企業でも働けない」といった非競業条項は、多くの州で法的に無効とされる。ContractNerdは、こうした問題点を検出し、改善を提案する。 このツールは、トムソン・ロイターのWestlawやJustia、Agile Legalといった法律データベースに加え、ニューヨーク市とシカゴの州法を基に分析を行う。効果性の検証では、他のAI契約分析ツールと比較して、無効条項の予測精度が最も高く、専門家と一般の審査員による評価でも優れた結果を示した。NYUのコンピュータサイエンス教授で研究の責任者であるデニス・シャーシャ氏は、「多くの人が法律の知識なく契約に署名しているが、ContractNerdは誰もが公平で法的に安全な契約を判断する手助けになる」と語る。 今後、地理的範囲の拡大を計画しており、契約の透明性と公正性の向上を目指す。研究は学術誌『Electronics』に掲載された。開発チームは、ムソンド・シンカラ、ユージェ・ダアン（当時NYU大学院生）、ハウエン・ユアン（当時NYU学部生）で構成されている。