AIの大量失業論は過剰反応——ホワイトハウスAI・暗号通貨担当者、Sacksが警鐘
白宮のAI・暗号資産担当者であるデビッド・サックス氏は、人工知能(AI)による大規模な雇用喪失の懸念が「誇張されている」と述べ、現状ではそのような事態は近い将来に起きないと強調した。サックス氏はX(旧Twitter)に投稿し、「AIが自己改善を繰り返し、神のような超知能に急速に到達する」という未来予測は、実際の進展を大きく上回っていると指摘。彼は、AIの進化は確かに著しく、品質や使いやすさ、コストパフォーマンスの面で大きな進歩を遂げていると認めつつも、それらは「終末的予言」の根拠にはならないと明言した。「オッペンハイマーはもういない」という表現で、核開発の時代に匹敵する危機的状況ではないと冷ややかに評した。 特に、AIが人間の仕事を一気に奪うという見方は、現実と乖離していると述べた。AIは現在、多くの場合、人間によるプロンプト入力や結果の検証に依存しており、完全に自律的に動くわけではない。この点から、AIによる「大量の職業消失」という予測は、AGI(汎用人工知能)の過剰な期待と同様に、誇張されていると断言した。 一方で、サックス氏は「AIを使いこなす人間が、そうでない人間を追い抜く」という現実を指摘。つまり、AIは直接の雇用代替ではなく、AIを効果的に活用する人材の競争力が高まるという「新たな競争原理」が成立していると説明した。 この見解は、他の業界のリーダーたちとも一致している。グーグルブレイン共同創業者のアンドリュー・イン氏も、AGIは「過大評価されている」とし、AIには人間が得意とする能力の多くがまだ及ばないと指摘。グーグルCEOのサンダー・ピチャイ氏も、現行AIを「人工くずれ知能(AJI)」と呼んで、驚くべき知能を持ちながらも基本的なミスを犯す点を強調している。 サックス氏の発言は、AIの技術的進展を否定するものではなく、その影響を冷静に見据え、過度な恐怖や楽観論から距離を置くべきだと訴えるものである。