2024原子無欠陥中性原子アレイを60ミリ秒で構築——潘建伟チームが量子計算の新記録達成
中国科学院の研究チームが、世界で最も大規模な原子量子計算システムの構築に成功した。中国科学技術大学の潘建偉教授、陸朝阳教授らと、上海量子科学研究中心・上海人工智能実験室の鐘翰森研究員らの共同研究グループは、人工知能(AI)技術を活用し、60ミリ秒の極短時間で2024個の原子を無欠陥の二次元および三次元配列に構成することに成功。これは中性原子系における無欠陥原子アレイの規模で、世界記録を更新した。 中性原子量子計算は、優れたスケーラビリティ、高い量子ゲート精度、高並列性、および任意の接続性を備え、次世代量子計算・量子シミュレーションの有力なプラットフォームとされている。本研究では、光トランクアレイにより中性原子を捕獲し、初期のランダム配置を無欠陥の秩序配列に変換する「重排技術」が鍵となる。従来の方法は、アレイ規模の増大に伴い計算時間と原子損失が増加し、数百原子規模に留まっていた。この課題を克服するため、研究チームはAIを用いたリアルタイム制御技術を開発。高速空間光変調器をAIが動的に駆動し、光トランクの位置と位相を精密に制御することで、全原子を同時に移動可能にした。 この新技術により、2024原子の無欠陥アレイ構成を60ミリ秒で実現。さらに、アレイ規模が拡大しても処理時間はほぼ一定(定数時間)に保たれるため、今後数万原子規模の実現も可能となる。実験では、単量子ビットゲートの精度が99.97%、双量子ビットゲートが99.5%、測定精度が99.92%と、国際最高水準に達しており、容錯型汎用量子コンピュータの構築に向けた技術基盤が確立された。 研究成果は2024年8月9日、物理学の頂点誌『物理レビュー・レターズ』(PRL)に「編集者推薦」で掲載され、アメリカ物理学会の『物理』誌でも研究のハイライトとして紹介された。審査者は「2024原子の配列構成は新たな記録」「原子量子物理における計算効率と実験的実現可能性の飛躍」と評価した。 本研究は、科技部、国家自然科学基金委、中国科学院、安徽省、上海市などの支援を受け実施された。