トランプ、デジタルサービス税に反発「米テックは世界の貯金箱ではない」 輸出制限と関税威嚇
ドナルド・トランプ元米大統領は、デジタルサービス税(DST)を導入している国々に対し、半導体輸出制限や追加関税を科すと警告した。トランプ氏は11月18日、自身のSNS「Truth Social」に投稿し、欧州諸国が導入または検討しているDSTが「米国テクノロジー企業を標的にし、中国の大手企業には完全に容認している」と非難。DSTは、グーグルやメタなど大手デジタル企業の収益に課される税で、複数の欧州諸国で既に施行または議論されている。 トランプ氏は「米国テクノロジー企業は世界の『おこづかい箱』でも『敷居』でもない」と強調。その上で、「デジタル税や規制を導入しているすべての国に対して、即時撤回を求める。そうでなければ、米国への輸出に大幅な関税を課し、高度に保護された技術・半導体の輸出制限を実施する」と明言。これは、トランプ政権時代に頻繁に用いられた「関税を武器とする交渉」の手法を再び取り入れたものだ。 この発言は、米欧が「不公正なデジタル貿易障壁」を是正する方針を共有した直後であり、双方の対立が鮮明化している。欧州連合(EU)は、デジタル市場法(DMA)やデジタルサービス法(DSA)といった規制の見直しは「議題外」と明言。これらはグーグルやアップルといった大手プラットフォームの独占的行動を規制し、有害コンテンツの監視を強化するものだ。 トランプ氏のこうした発言は、過去の経緯と一致する。今年夏、カナダがDST導入を予定した直前に、トランプ政権が貿易交渉を凍結。カナダはその影響を受けて計画を中止した。また、トランプ氏は近年、テクノロジー業界との距離を縮めており、OpenAIのサム・アルトマン、NVIDIAのジェンセン・ファン、メタのマーク・ザッカーバーグらトップCEOと会談。アップルのティム・クック氏も、中国・インドでの生産政策を巡る関税懸念を背景に、トランプ氏にガラス製の彫刻を贈呈した。 さらに、トランプ氏は今週、米国が半導体メーカー・インテルの10%株式を取得すると発表。米国が半導体産業の再編を主導する姿勢を強調している。トランプ氏の発言は、米国テクノロジー企業を守るという名目で、貿易政策と技術主権を一括して戦略化する動きの表れである。