マーベル、カスタムXPUパイプラインでAI独立を宣言
マーベルテクノロジーは、AI時代の独立性を宣言する形で、カスタムXPU(AIプロセッサ)開発のパイプラインを急速に拡大している。2019年のアベラ半導体(Avera Semiconductor)買収は、同社の戦略的転換点となった。アベラはIBMマイクロエレクトロニクスとグローバルファウンドリーズの設計チームを統合し、高精度なカスタムチップ開発力を持つ設計屋として知られる。この買収により、マーベルはAWSのTrainium 2・3・4やマイクロソフトAzureのMaia 100・200といったカスタムAIチップの開発支援を担うようになった。 2026年2四半期の業績では、マーベルの売上高は20.1億ドル(前年比57.6%増)に達し、データセンター部門が14.9億ドル(前年比69.2%増)を記録。このうち、カスタムXPUと電気光変換(electro-optics)製品がデータセンター部門売上の約75%を占め、AI関連売上は前年比4.5倍の7.09億ドルに上った。カスタムXPUの売上は前年比2倍の約3億ドルに達し、AIとクラウド企業(ハイパースケーラー)が自社チップ開発を進める中で、マーベルの役割が重要視されている。 マーベルのマット・マーフィーCEOは、カスタムXPUの開発スロットが18件、全体の機会は50件以上にのぼり、将来の契約総額が750億ドルに達する可能性があると報告。2028年のデータセンター市場のターゲットは940億ドルに引き上げられ、同社はそのうち20%(188億ドル)を獲得する見込み。2024年時点で40億ドルのデータセンター売上から、5年間で4.5倍の成長が見込まれ、年率36.3%の複利成長が実現可能。 この成長の背景には、NVIDIAのAIチップ市場シェア(90%)とネットワーク(NVLink・InfiniBand含む)における支配的立場への懸念がある。米国での独占禁止訴訟の可能性が高まる中、NVIDIAがNVLink FusionのIPをカスタムXPU開発に開放する動きが加速。これにより、ハイパースケーラーは自社開発のCPUやXPUをNVIDIA GPUやGrace/Veraプロセッサと接続可能に。マーベルはこの流れを後押しする、カスタムXPU設計と接続技術のパイプラインを強化。 また、マーベルは自動車用イーサネット事業をインフィニオンに売却し、18億ドルの利益を計上。現金残高は12.2億ドルに増加。今後、データセンターとエンタープライズネットワーク部門を統合し、「データセンター部門」として再編する予定。マーベルは、AIチップの「独立」を実現するためのインフラを、ハイパースケーラーのニーズに応じて提供し続ける。