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上海交大チームがAI材料設計に革命:CGformerで「長距離相互作用」を解明、高熵固態電解質の発見に成功

3日前

上海交通大学人工智能と微構造実験室(AIMS-lab)の研究チームが、新材料の性能予測を革新するAIモデル「CGformer」を開発した。このモデルは、従来の結晶図ニューラルネットワークが抱える「近接情報伝達」による「視野狭窄」の根本的課題を克服し、Transformerのグローバルアテンション機構を導入することで、原子間の長距離相互作用を包括的に捉える能力を実現した。これにより、材料のイオン伝導性や熱力学的安定性といった重要な性質を、従来のモデルよりも大幅に高い精度で予測可能となった。 従来のCGCNNやALIGNNなどのモデルは、各原子が隣接原子とのみ情報交換するため、遠方の原子間の協調効果を把握できず、特に構造が複雑で無秩序な高エントロピー材料の予測精度が著しく低下していた。CGformerは、多頭アテンション機構により、すべての原子が同時に他のすべての原子と情報を共有できる「全図感知」を実現。さらに、中心性、空間的距離、化学結合の特徴を統合した多層的エンコーディングにより、物理的に意味のある相互作用を正確にモデル化した。 研究チームは、高エントロピーナトリウムイオン固態電解質(HE-NSEs)という極めて困難な材料体系を「試金石」として採用。CGformerは、わずか238個の計算データで微調整しただけで、平均絶対誤差(MAE)0.0361という高精度を達成。14万種類の候補から6種類の高性能材料を予測し、実験で合成した結果、室温でのイオン伝導率が0.256 mS/cmに達し、既存の基準材料を大きく上回った。 この成果は、Nature子刊「Matter」に掲載され、上海交通大学の李金金教授と黄富強教授が共同責任著者を務め、博士課程学生の陶科豪と李佳聡が共著第一著者を務めた。CGformerは、AIと材料科学の融合において、アルゴリズムの根本的革新が実際の科学的発見を可能にする新たな道を示した。今後は、リチウムイオン導体や光触媒、熱電材料などへの応用が期待され、AI駆動の材料開発の新たなスタンダードとなる可能性を秘めている。

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