AIが加速する創薬市場、2034年までに165億ドル規模に
人工知能(AI)を活用した創薬市場は、2025年の69.3億ドルから2034年には165.2億ドルに達すると予測され、2025年から2034年の間で年平均成長率(CAGR)10.10%で拡大する見通しです。この成長は、がんや心血管疾患など慢性疾患の増加、薬剤開発の効率化ニーズ、そして精密医療への投資拡大に支えられています。特に、AIはターゲット同定、新薬候補の分子設計、臨床試験の最適化など、創薬プロセスのあらゆる段階で生産性を飛躍的に向上させています。 北米が2024年時点で56.18%の最大シェアを占め、特に米国はAI創薬市場で主導的。2025年から2034年にかけて10.26%のCAGRで成長が見込まれ、AIスタートアップの台頭と大手製薬企業の積極的な投資が背景にあります。一方、アジア太平洋(APAC)地域は21.1%の高いCAGRで急成長が予想され、中国やインド、日本、韓国などでの医療インフラ整備とAI・ビッグデータの活用が後押ししています。 市場の主なセグメントでは、小分子薬が最大のシェアを占め、大分子(バイオロジカル) が最も成長が速い分野とされています。技術面では機械学習(深層学習を含む)が中心的役割を果たしており、ソフトウェアが提供形態の主流です。応用分野ではがんが最大の市場を占め、感染症分野が最も成長が見込まれます。エンドユーザーでは製薬・バイオテクノロジー企業が中心ですが、学術・研究機関のAI活用が急拡大しています。 実際の事例では、あるがん治療専門のバイオファーマ企業がAIプラットフォームを導入。機械学習と生成AIを用いてターゲット同定や分子設計を自動化し、従来18~24か月かかっていた初期段階の開発を3か月に短縮。早期の失敗率を70%以上削減し、R&Dコストを1候補あたり5000万~6000万ドル削減。臨床試験の設計もAIで最適化し、開発サイクルは60%以上短縮されました。 国際的にも注目が集まり、2025年2月にはAI創薬スタートアップ「Variational AI」が550万ドルのシード拡充ラウンドを完了。NVIDIAとInnophoreはAI駆動の薬物安全性スクリーニングプラットフォーム「CavitOmiX」を共同開発。また、リード・ホフマン氏が新規スタートアップ「Manas AI」を設立し、AIを活用したがん治療薬開発に参入するなど、業界の注目度は高まっています。 AIは創薬の「リードタイム短縮」「コスト削減」「成功率向上」を実現し、今後も製薬業界の基盤技術として不可欠な存在となる見通しです。