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MITが新モデルで核融合プラズマの安全な停止を予測可能に

7日前

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、核融合発電所の信頼性向上に向けた新しい予測モデルを開発した。核融合は太陽のエネルギー源と同じ原理で、高温高密度のプラズマを磁場で閉じ込めて原子核を融合させ、エネルギーを放出する技術。現在、世界中で実験用のトカマク(トロイダル・チャンバー)が稼働しており、その中でもMITの研究グループは、プラズマの「減速過程(rampdown)」における不安定化を予測する手法に成功した。 プラズマは1000万度を超える高温で回転し、その電流を急に停止させると、装置内壁に激しい熱フラックスを引き起こし、損傷を招くことがある。これまでの実験では、減速プロセスそのものが不安定を引き起こし、修理に時間がかかることもあった。MITの研究チームは、機械学習と物理ベースのプラズマ動力学モデルを組み合わせ、少量の実験データで高精度な予測が可能になる手法を開発。このモデルはスイスのEPFLが運営する「TCVトカマク」の数百回の実験データを用いて訓練・検証され、低性能から高性能までさまざまな状況でのプラズマの挙動を正確に予測した。 さらに、予測結果をもとに自動で安定した減速経路(トラジェクトリ)を生成するアルゴリズムも開発。実際のTCV実験で実装した結果、従来よりも早くかつ不安定な中断を避けながらプラズマを安全に停止させることに成功。研究リーダーのアレン・ワン(MIT航空宇宙工学科大学院生)は「核融合が実用的なエネルギー源になるためには信頼性が不可欠。プラズマの管理を高めることが鍵だ」と強調した。 この研究は、MITのプラズマ科学・融合センター(PSFC)と情報・意思決定システム研究所(LIDS)、およびコモンウェルス・フュージョン・システム(CFS)との共同研究。CFSはMIT発の企業で、世界初のコンパクトなグリッド規模核融合発電所「SPARC」の開発を目指しており、今回のモデルはその技術的基盤として期待されている。研究はEUROfusionやスイス政府の支援も受けており、核融合エネルギーの実現に向けた重要な一歩と評価されている。

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