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AIとロボティクスで革新するナノ粒子設計、がん治療薬の効果と安全性を大幅に向上

17日前

デューク大学のバイオメディカル工学研究チームが、人工知能(AI)と自動化実験技術を組み合わせた新平台「TuNa-AI」を開発し、ドラッグデリバリー用ナノ粒子の設計を大幅に効率化した。この技術は、従来のAIアプローチが「成分の選定」や「配合比率」のどちらか一方しか扱えないという課題を克服し、薬物と添加剤(非活性成分)の最適な組み合わせを同時に最適化できる点が特徴だ。研究は、米国化学会の学術誌『ACS Nano』に2025年1月に発表された。 研究チームは、ロボットを活用した自動液体処理システムで1,275種類の異なるナノ粒子配合を体系的に作成。AIモデルはそのデータを学習し、性能と安定性を高める最適な配合を予測。その結果、従来手法と比べてナノ粒子の形成成功率が42.9%向上した。実証実験では、白血病治療薬「ベネトクラクス」を効果的に封入できるナノ粒子を設計。このナノ粒子は水溶性が向上し、培養細胞での白血病細胞の増殖抑制効果が従来薬より顕著だった。 さらに第二のケースでは、発がん性が懸念される添加剤の使用量を75%削減しながらも、薬物の効果を維持し、マウスモデルでの体内分布も改善。これは、AIが安全性と効果性の両立を実現できることを示している。 研究を主導したダニエル・レーカー助教と博士課程学生のジルウ・チャンは、「AIは薬物の候補を絞り込むだけでなく、配合比率まで最適化することで、実用的なナノ粒子の開発を可能にする」と強調。この平台は、がんや難治性疾患の治療薬の効率的かつ安全な投与を実現する基盤技術として、今後、デューク内外の医療研究者と連携して拡張される予定だ。

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