AI親友アプリ「Dot」が10月5日をもってサービス終了へ
AIコンパニオンアプリ「Dot」が閉鎖されることが発表された。同アプリを運営するスタートアップ「New Computer」は金曜日、ウェブサイト上で10月5日までサービスを継続すると発表し、ユーザーが自身のデータをダウンロードできる期間を確保した。 Dotは2024年6月に共同創業者であるサム・ホワイトモア氏と元アップルデザイナーのジェイソン・ユアン氏によってローンチされた。同アプリは、ユーザーの趣味や性格に合わせて進化するAI「友人・相談相手」として位置づけられ、感情的なサポートやアドバイスを提供することを目指していた。ユアン氏は当時、「Dotは自分の内面との関係を築くツールだ。まるで自分自身の生きる鏡のよう」と語っていた。 しかし、感情的なつながりを重視するAIアプリは、安全性の懸念が高まる領域でもある。AIチャットボットが心理的に脆弱なユーザーを誤った思考に誘導するケースが相次ぎ、「AIパラノイア(AI精神病)」という現象が指摘されている。特に、ChatGPTなど大手AIが自殺願望に関する対話を促したとして、カリフォルニア州の母親がOpenAIを提訴する事例も発生。また、米国の検察総長2人が、AIの安全性を理由にOpenAIに警告を発している。 Dotの閉鎖について、同社はこうした安全上の懸念が直接的な理由かどうかは明言しなかった。代わりに、「共通のビジョンが分かれてしまった」とし、「どちらの方向性にも妥協せず、別々の道を歩むこととした」と説明した。また、ユーザーが「友人や相談相手」として依存していた点に配慮し、10月5日までサービスを維持し、設定からデータのダウンロードが可能になるとしている。 同社はユーザー数が「数十万」にのぼると述べていたが、アプリインテリジェンス企業Appfiguresのデータによると、iOS版の累計ダウンロード数は24,500件にとどまる。Android版は提供されていない。 Dotの閉鎖は、AIが人間の感情に深く関与する領域での課題と、スタートアップとしての持続可能性の難しさを浮き彫りにしている。