グーグル反トラスト訴訟でAI競合が恩恵、検索改革案に批判も、出版・広告業界への影響懸念、OpenAIの行動が分断回避に貢献
米国司法省がGoogleに対して提起した独占禁止訴訟の最終裁定が、2024年5月に下された。米国連邦裁判所のアミット・メーハ裁判官は、Googleが検索市場で独占的支配を維持していたと認定し、その結果として「Chromeの売却」や「Androidの分離」は命じなかった。一方で、GoogleがAppleなどパートナーと結ぶ「排他的なデフォルト契約」の禁止と、一部の検索データの競合他社への共有を命じた。この裁定は、Googleにとって最も望ましい結果に近いものとなった。 Googleは、Appleに対して年間約200億ドルを支払い、iPhoneのデフォルト検索エンジンとしての地位を維持している。この契約は、裁判の中心的な争点だったが、メーハ裁判官は「非排他的な支払い」は許容し、排他的条項のみを禁止した。これにより、Googleは依然としてAppleとの関係を維持できる一方、AppleがChatGPTやPerplexityなどの他社検索エンジンをデフォルトに設定することも可能になる。この動きは、OpenAIやPerplexityといったAI検索スタートアップにとって大きなチャンスとなる。特に、Googleが提供する検索インデックスやユーザー行動データの共有義務は、競合AIサービスの精度向上に役立つと期待されている。 一方で、MicrosoftのEdgeやAppleのSafari、PerplexityのCometブラウザなど、Googleのブラウザ競合にとっては打撃となる。Chromeは30億人以上の月間アクティブユーザーを抱え、Googleの検索収益と広告基盤を支える重要なインフラであり、その存続は競争の均衡を崩す要因となる。また、オンラインメディア界では懸念が広がっている。GoogleがコンテンツをAI学習に利用する際に、コンテンツ提供者に「オプトアウト」の選択肢を与えないことで、質の高いジャーナリズムの報酬が損なわれる懸念がある。ニュース・メディア協会のダニエレ・コフィー氏は、「この裁定は、GoogleがAIでコンテンツを無断利用し続ける状況を許すものだ」と批判した。 経済学者や監視団体の一部からは、「罰則が軽すぎる」との声も上がっている。アメリカ経済自由プロジェクトのニディ・ヘッジ氏は、「Googleの支配力をほとんどそのまま残すのは、司法の怠慢だ」と断罪。一方で、コンピュータ・コミュニケーション産業協会(CCIA)などは、ChromeやAndroidの売却を避ける判断を「適切」と評価。AI時代の競争を踏まえ、メーハ裁判官は「競争を促すための最小限の措置」を採用したと解釈されている。 Googleは裁定を不服として控訴する意向を表明。一方、同社の親会社アルファベットの株価は裁定後、約8%上昇。市場は、Googleのビジネス基盤が維持されたことに好意的に反応した。今後は、司法省が提起した広告技術市場における独占訴訟の裁定が注目される。ここでの「売却」が命じられれば、Googleの広告帝国に大きな影響が出る可能性がある。