AIと機械が科学を拓く時代、ノーベル賞に「人間と機械の共同発見」を認めるべき理由
科学の進展は、もはや人間の単独の知恵に依存する時代を過ぎた。スウェーデンの発明家アルフレッド・ノーベルが1901年から授与を始めたノーベル賞は、人類の知的業績を称えるものだが、現代の科学的発見の多くは、人間の能力をはるかに超える機械の力に支えられている。重力波の検出、ヒトゲノムの解読、AIによるタンパク質構造の解明――こうした画期的な成果の背後には、人間の感覚や計算能力をはるかに上回る、高精度なセンサー、超高速計算、複雑な実験装置が不可欠だった。 しかし、ノーベル賞など主要な科学賞は、依然として発見を「人間の業績」として評価する傾向が強い。重力波の観測に貢献したLIGO実験や、宇宙を観測するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、大型ハドロン衝突型加速器の構築など、その成功は機械の設計と実装の革新にかかっていたにもかかわらず、賞の対象は主に研究者個人に向けられている。機械は「道具」として扱われ、発見の共創者としての役割は無視されている。 この現状は、科学の本質を誤解させる。機械は単なる補助工具ではない。重力波を検出するための4kmのトンネル、プロトンの1万分の1以下の長さ変化を検出するレーザー、AIによる複雑な分子構造のシミュレーション――これらは科学そのものである。特にAIは、薬物開発やタンパク質折りたたみの予測で人間を超える成果を上げており、国際数学オリンピックでも金メダルを獲得するなど、知的パフォーマンスの分野で新たな基準を提示している。 賞の役割は、過去の功績を称えるだけでなく、未来の研究方向を導くことにある。機械の貢献を認めない限り、科学のあり方に対する社会の認識は古くさいままに保たれる。今こそ、人間と機械の協働による発見を公式に評価する仕組みを整えるべき時だ。これは、既存の賞に新たなカテゴリを設ける、あるいは専用の「人間・機械共同賞」を創設する形で実現可能である。科学の未来は、人間の知性と機械の能力が融合した「共同創造」によって切り開かれる。その真実を、最高の栄誉が反映するべきである。