ダッソーとNVIDIA、産業界向け「世界モデル」で物理AIを実現へ
英米の半導体大手ナビディアとフランスの工業ソフトウェア大手ダッソー・システムズが、物理世界に根ざしたAI「Physical AI」の実現に向けて戦略的提携を拡大した。ナビディアのオムニバース・シミュレーション担当バイスプレジデントを務めるレブ・レバレディアン氏は、AIの真の価値は「物理世界」に応用されたときにあると強調。物理法則に基づき、現実世界の挙動を理解するAIが、設計・工学・材料科学、さらには汎用ロボティクスの分野で革命を起こすと語った。 その実現には、まず現実世界をコンピュータ内に正確にモデル化する必要がある。このため、両社は25年間の協力を基に、ダッソーが45年間にわたり蓄積したデジタルツイン技術と、ナビディアのAIインフラ、オープンモデル、ソフトウェアライブラリを統合。業界特化型の「産業世界モデル(Industry World Models)」の開発基盤を構築する。このモデルは、分子レベルから工場全体まで、多スケール・多分野のシミュレーションをAIと統合し、因果関係や将来のシナリオを予測する能力を持つ。 ダッソーは、このモデルを基に「3Dユニバース」を進化させ、AIベースの「バーチャルコンパニオン」を提供。ビジネス支援の「オーラ」、工学課題解決の「レオ」、科学的知見を提供する「マリー」の3種類が、ユーザーの意図を理解し、産業世界モデルと連携して意思決定を支援する。 ナビディアは、ダッソーのモデルベースシステム工学(MBSE)技術を活用し、AIファクトリーの設計に役立て、特に「ルビン」プラットフォームを初の対象に。また、ナビディアのOmniverse DSX BlueprintにMBSEを統合し、ギガワット規模のAIデータセンターの構築を支援する。 具体的な応用例として、ナビディアのBioNeMoとダッソーのBioviaモデルの連携で新薬・新材料の開発が加速。Simuliaの仮想ツインは、CUDA-XやAI物理ライブラリで設計精度とリアルタイム予測を向上。また、デルミアの生産システムや3DExperienceプラットフォームにナビディアのAI技術が統合され、自律的・ソフトウェア定義生産の実現が進む。 この提携により、ダッソーはナビディアのインフラを活用し、3大陸でAIファクトリーを展開。クラウド上で3DExperienceプラットフォームを動作させ、データの自主性と知的財産保護を確保。製造業界では、AI導入が急速に進んでおり、ロッキーウェルト・オートメーションの調査では、56%がAI導入の試行中、95%が今後5年以内にAI投資を計画している。 両社の提携は、産業界に「科学的に検証されたAI」を提供し、実世界の課題解決を加速する新たな時代の幕開けを示している。
